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プレリュード・フォー・ ロンリー・ボーイ&ガール

  • 南1-2ホール | B-07〜08 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • ぷれりゅーど・ふぉー・ ろんりー・ぼーいあんどがーる
  • 青川志帆
  • 書籍|A5
  • 8ページ
  • 100円
  • 2024/9/8(日)発行
  • 病を患い、死を覚悟した孤独な少女は、ホスピスで不思議な少年と出会う。  少年の正体とは? そして少女が選ぶ未来とは……?  これは孤独なふたりが奏でる序曲(プレリュード)――。

    中綴じ本。表紙フルカラー。二段組8ページ。

    ※こちらの本は短編集「ガールズ・ロンド」と「ボーイズ・セレナーデ」を両方ご購入いただいた場合、セット特典として無料になります。


    【試し読み】

     余命を告げられて、一ヶ月が経つ。
     もとから、長く生きられないとは知っていた。
     だけど、余命を知る前は「もしかしたら」と思う心を捨てられなかった。
     新薬の開発が間に合うかもしれない。なにかの奇跡で順番が狂い、ドナーが現れるかもしれない。
     ――奇跡なんて、起きっこない。
     諦めてから、心は凪いだ。

     病院からホスピスに移って、無心に絵を描いていた。
     私の絵なんて上手でもないしセンスがあるわけでもないから、ただの自己満足なんだけれど。
     ここに私がいたんだ、とどうにか残したかったのかもしれない。
     いつものように、車椅子でホスピスの敷地にある池のほとりまで移動する。
     転落防止のために柵がぐるりと池を取り巻いていた。
     ひそやかに水をたたえる池には、蓮の花が浮いている。
     私は持ってきたスケッチブックに、鉛筆で絵を書き殴る。
     何度となく描いた、池と蓮の花の絵。
     そうして、待った。
    「――こんにちは」
     彼が声をかけてくれるのを。
     振り向くと、線の細い少年が立っていた。
     彼はいつものように日傘をさしていて、その手には手袋がはまっている。
     男の子でも、最近は夏には日焼けケアをするとどこかで聞いていたけれど、夏でも長袖長ズボンの彼は神経質すぎる気もした。
     暑くないのだろうか。
    「……こんにちは。また来たのね」
    「うん」
     少年は白い肌に、金髪に赤紫の目を持っていた。
     あの赤紫は、夜に近づいた夕焼け空に一番近い色合いをしている。
     何度も水彩絵の具を混ぜては赤紫を作ったけれど、どうしてもあれほど澄み切ったきれいな色はできない。
     文句なしに端整な顔立ちをしているのに、どうしてか印象が薄い。
     別れたあと、彼の顔をすぐに忘れてしまう。不思議な話だ。
     初めて会ったとき、「アイキャントスピークイングリッシュ……」と答えたら、
    「ハローぐらいは言えるでしょ」
     と日本語で言われ、笑われたのだった。
     初めて会ったのは、二週間前。それから、私がこうして池の絵を描いていると、彼が現れるようになった。
     短い会話のなかで、彼が祖母の見舞いに訪れていることを知った。
     その祖母だけが日本人で、あとはイギリス人の家庭なのだと。
     父親の仕事の都合で小さいころから日本に住んでいて、だから日本語が得意なことも。
     私は、彼との会話を心待ちにしていた。

    【続きは製本版でお楽しみください】


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