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推しが死んだ

  • 南3-4ホール | し-86 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • おしがしんだ
  • 絲卯叶子
  • 書籍|文庫判(A6)
  • https://sizu.me/iggy
  • 2025/5/11(日)発行
  • 推しが死んだこと、ありますか?

    推しが、死ぬ。当たり前なのに意味が分からなくて、どれだけ考えてもよくわからなくて、その果てにわたしがどうなったかというと「死んでない」という結論になりました。引退したくて死んだことにしたんだよね? ということになっています。まるで陰謀論です。まともじゃないこともわかっています。でもその味にしないと飲みこめないのでそうしている、そうした。苦肉の策です。信じたくない現実を、嘘でなかったことにしてしまうことがあるんだ、ってわたしは初めて知りました。この年齢になってもまだ初めて知れることがあって嬉しいなと感じます。というか意味が分からない。だからもうこれでいいとおもっています。死んでないし意味がわからない、死んだとか言われても意味が分からないから困る、もう言うな、って感じです。

    この本では推しが死ぬちょっと前と死んでからの日記をまとめています。厳密に言うと三月一日から5月末までまとめています。そっちのほうが読みながらカウントダウンできるっていうか、ライブ感があっていいかなっておもって。推しが死んでからも、別に普段通りの毎日です。でも毎日、「死んでない」と「意味が分かんない」がいつだって頭の片隅にあります。死んでないとおもっていて、意味が分かんないとおもっているからです。意味が分かんないものはどうしようもありません。意味がわかんない。推しが死んだ、それを心底信じられる人なんているんだろうか。だってわたしたちは友達や家族じゃないからね。死にましたって言われても、はあそうですかで信じられないほうが一般的なのではないかと考えています。そう考えると推しってすごく変、誰よりも長く付き合いがあるのに、誰よりも全然知らない人でもある。よくわからないですね。でも「推し」なんて、それでいいんだとおもっています。

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