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不死鳥会議

  • 第二展示場 Eホール | お-02 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • ふしちょうかいぎ
  • ひゐ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 38ページ
  • 200円
  • 2024/5/18(土)発行
  • 「このクソ退屈なゴミ世界からおさらばするために――みんなで死ぬ方法を、不死鳥が真に死ねる方法を考えるのです!」

    世界が終わり全ての生き物が死んだはずの世界。
    不死鳥達だけは、不死故に生き残っていました。
    「娯楽」をなくした不死鳥達は、どうにか真の死を得ようと会議を始めたのでした。

    ======小説冒頭サンプル======

     世界は終わってしまいました。

     具体的に言うと、全ての生き物が息絶え、植物も枯れ果てました。昼夜がなくなり、空は常に灰色。風はやみ物音一つしません。

     世界に残されているのは、すっかり荒れ果てた大地と、幸いまだ干上がってはいないものの、もう波打つことがない海。そしてかつて世界の終わりに抗ったものの、結局何も成せなかった人間達の遺物と呼ぶべきガラクタくらいでした。

     まるで時間が止まってしまったような無機質な光景は、終末の光景と言って間違いありませんでした。もう何かが生まれることも、進化することもありません。明日も未来もないのです。

     そんな世界に、残念ながら、取り残されてしまった鳥の群れがいました。

    「やあ、君もまだ死んでないのかい?」

    「そう言うそっちこそ、生き残ってしまっているのかい?」

    「不死鳥だからね、まあ死なないよね」

     彼らは不死鳥。死ぬことのない鳥。

     かつては特に群れることなく生活していた彼らでしたが、世界が終わると、自然と群れるようになりました。

     世界中を飛び回って、動くものを見つけたら、そこに行ってみる。そんな具合に互いを発見しあっていたのです。

    「なんだ、また不死鳥か」

    「ちぇっ、飛行機なら人間が乗ってるかと思ったのに、やっぱり不死鳥だったか」

    「頼むから不死鳥以外の生き物に会わせてくれよ!」

     動いているのは、つまり生き残っているもの。彼らは生き残っているほかの生き物を探していたのでした。

     ところが、この世界で生き残っているのは、やはり不死鳥のみ。

     他の生き物を探した結果、彼らは仲間を見つけあう形になり、最終的には、生き残っている全ての不死鳥が集まってしまいました。

    「やっぱりもう、俺達不死鳥しか残ってないんだよ」

    「つまり娯楽はないってこと……!」

     自然に集まってしまった彼らは、絶望的な声で結論を出します。

     一羽が高らかに叫びます。

    「それなら――もう俺達も死ぬしかない!」

     その不死鳥は上空に飛び上がりました。

    「他の生き物全部死んだ! 楽しみ全部死んだ! 終わりだ! 俺達は終われないのに!」

     不死鳥全員が、表情を暗くさせました。俯く者もいれば、天を仰ぐ者もいて、中にはしくしく泣きだしてしまう者もいます。

    「まさに生き地獄!」

    「意味のない生!」

    「楽しみがないのなら、不死なんて呪いだよ!」

     ――世界がまだ終わっていなかった頃。不死鳥の「不死性」は皆に憧れられたものでした。死なないということは、お得なことに違いありませんでした。

     不死鳥達自身も、この不死の力の恩恵にあずかっていました。死なない、ということは生き続けられるということ。生き続けていれば、新しい発見や楽しみがあるものです。

     ところが、そういった発見や楽しみは、他の生き物が存在していたからこそのもの。不死鳥達は、他の生き物がいるからこそ、楽しい生活をしてこられたのです。他の生物が進化していく様子は、そして何かを生み出す様子は、また生み出した様々なもの自体も、これ以上にない娯楽でした。

     世界が終わり、他の全ての生き物がいなくなってしまったいま、どこに新しい発見が、新しい楽しみがあるというのでしょうか。

     この世界にあるのは、もはや退屈と絶望しかありません。

     しかも永遠に続く退屈と絶望です――不死鳥は、死ねないのですから。

    「――では、みんなで会議しましょう!」

     と、より高く飛び上がった不死鳥が一羽。

     その不死鳥はネクタイを身に着けていました。

    「このクソ退屈なゴミ世界からおさらばするために――みんなで死ぬ方法を、不死鳥が真に死ねる方法を考えるのです!」

     どうにかして真に死ぬ方法を発見し、死ぬこと。

     全ての生き物において行かれた不死鳥達が救われるには、もはやそれしか手段がありませんでした。

     ……それすらかなわないのなら、もう手段はないのですが。

     

     

     

    「はい! 僕に一つ、案があります!」

     バンダナを身に着けた不死鳥が、片翼を上げます。

    「そこのお前、発言せよ!」

     会議を進めるのはネクタイを身に着けた不死鳥です。『ネクタイ』に許可されて『バンダナ』は背筋を伸ばします。

    「そもそも僕達とは、寿命をはじめとした命の終わりを迎えたら身体が燃え上がり、その灰の中から雛として新しく生まれ変わります。そう考えたら……灰が残っているからこそ、僕達は生き返る、真に死ねない、ということではないのでしょうか?」

     『バンダナ』の言う通り、それが不死鳥達の不死の仕組みでした。寿命でも、怪我でも、命の終わりを迎えた時、不死鳥の身体は燃え上がり、残った灰の中から雛として生まれ直す……不死と言っても、実際は一度死んではいるのです。復活してしまうというだけで。

     『バンダナ』は続けます。

    「そこで逆に考えてみるのです――灰が残らなければ? 灰が残るから復活する僕達は、じゃあ、灰が残らなければどうなるのか……」

    「灰が残らなければ、そこから雛は生まれない! つまり……不死は終わるのでは!」

     他の不死鳥が声を上げます。しかし別の不死鳥が、

    「でも、その灰ってどうやってなくすのさ」

    「燃えるのです! いつも以上に! 自分達の身体を激しく燃やすのです!」

     火柱が不死鳥の群れの中から上がりました。『バンダナ』です。炎はまるで蛇のように渦巻いて『バンダナ』を包みます。

    「勝手に燃えてしまうのはコントロールできませんが、燃えようと思えば、僕達は燃えることができるじゃないですか! そこで火力を上げてみるのです! 灰すらも残らないほどに!」

     『バンダナ』の炎はより激しく燃え上がり、周囲にいた不死鳥達は思わず身を引いてしまいます。中には飛び立って逃げ出すものもいました。

     どの不死鳥も、目を見開いていました。これほどに激しい復活の火は、誰も見たことがなかったのです。そもそも意識して激しく燃えようと思わなければ、こうも燃え上がりません。その勢いにも、その考えにも、皆、唖然としていたのです。

     やがて。

    「――なるほど! 全部残さず燃えさせてしまえばいいんだな!」

     一羽の不死鳥が『バンダナ』の炎の中に飛び込みます。そこで自身の身体を燃え上がらせたのなら、二話の炎はあわさって、より勢いを増します。

    「一羽よりも二羽の方が炎は激しくなるぞ! さあもっと!」

     その一羽を皮切りに、他の不死鳥が次々に炎の中に飛び込んでいきました。

    「私も! 私も!」

    「全員で燃えるんだ! 全員の炎をあわせれば!」

     もちろん、躊躇する不死鳥もいましたが、早く死にたい不死鳥が彼らに声をかけます。

    「おい、お前達、死にたくないのか? もしこの方法で本当に死ねたのなら、不死鳥の数はどんどん減っていくんだ。それってどういうことかわかるか? 炎が小さくなっていくんだぞ、不死鳥がいなくなるんだから! それで火力が足りなくなったのなら……」

    「お、おいて行かれるってこと? いやだ! おいてかないで! こんなクソ退屈な場所に残さないで!」


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