こちらのアイテムは2024/5/19(日)開催・文学フリマ東京38にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京38公式Webサイトをご覧ください。

不在と読書

  • 第一展示場 | T-33 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • ふざいとどくしょ
  • 並木毬絵
  • 書籍|四六判
  • 154ページ
  • 1,000円
  • 2024/5/19(日)発行
  • 読書日記。私の人生には何もないが、本はいつでも面白い。

    正宗白鳥、正岡子規、岸田劉生、等々……少し昔の文学を一人でのろのろ読み、渡り歩き、買っては積む、2023年12月〜2024年2月までの三ヶ月間の日記です。
    生きている人はほとんど登場しません。(筆者の人間関係が著しく乏しいため)
    もういない人はたくさん登場します。

    個人的な趣味から、心情の吐露はほぼ行っていません。
    筆者がアロマンティック(恋愛感情を抱かない人)なので、恋愛の話は一切ありません。
    読書好きの方、文学好きの方、淡々としたただの他人の日記を読みたい方へ。

    四六判・並製・カバー付、本文154p。

    ***

    まえがき

     本を読めば何かしら思う。思うのだがすぐ忘れてしまう。それで日記をつけることにした。

     日記であるから立派な感想を書く必要はない。自分がわかればよい。抜き書きもするけれど、他の人が感心しそうな箇所を探すのでなく自分が「おっ」と思ったところを手帳に書く。他の人が見たら、なんでこの人はこんな文章を書き留めたのだろうと首を傾げるかもしれない。もしかしたら未来の自分ですらそうかもしれない。しかし日記なのだから他人の目は気にしないでおく。未来の自分も他人である。

     日記であるからには読書以外の話題も出てくる。しかしその点、この日記は貧弱なことになると予想していた。なぜならば、日記の筆者、つまり私は、活動的でも社交的でもなく、恋人も伴侶もなく、友人と月に一度ほど会うほかは他人と深い関わりを持たず、興味深い労働に従事しているわけでもなく、趣味といえば読書(そして本を買うこと)くらい、したがってほとんど動きのない日常を送っているからである。

     私の予想は半ばは当たり半ばは外れた。手帳に記される日々が単調で刺激の少ないのは予想通りだったが、今日の空模様だとか今日聞いた鳥の鳴き声だとか、はたまた気に入った音楽だとか見かけた犬だとかをいちいち書くようにすると日記の行数は伸びていった。そんな些細な記述を読み返して思い出すのは意外にも楽しいことであった。出不精である自分が案外遠出していることにも気づいた。といって私の生活が面白い出来事や特筆すべき話で満ち溢れるようになったわけではない。あとはそういう日々を貧弱と呼ぶかどうかであろう。

     貧弱とか単調とかさんざんな言い方をしたが、また外から見たらつまらない人間であることは間違いないにしても、幸い私は自分自身に退屈したことだけはない。これはひとえに本というものが昔から今までずっと私の人生にあってくれたからだと思う。」

    ***

    「一月七日
     五時すぎ目が覚める。早すぎるので布団の中で過ごす。いつしか寝たらしく、七時ごろ起きる。晴時々曇、薄日、昨日一昨日より冷え込む。昼食後、ベッドの上で『宮城道雄全集』少し読み、しばし目を閉じて音を聴いてみる。時計の秒針の音、隣の換気扇の音、飛行機が上空を飛ぶ低い響き、カラスが鳴いている。昼ナンカレー。
     ……
     本屋で『墨汁一滴』買う。」

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