「あちゃあ……、まさか降るとは思わなかったなぁ」
音楽好きな古文の教師を説き伏せて作った軽音部。とはいえ、部員は朝陽 影三ひとりなので、正確には部ではない。教師が気を利かせて「放課後の教室使用許可」を取っておいてくれたのだ。
視聴覚室の暗幕を閉めて、好きなバンドの曲やリズムマシンに合わせてギターを演奏するのが影三の「部活動」、今日も夢中でギターを弾いていたから、雨に気付いていなかった。 影三は空を見上げる。昼までは抜けるような青空が広がっていたというのに、今はどんよりと雲が垂れ込めて、静かな雨がしとしとと降り続いている。こうなったら、ギターだけでも濡らさないよう、制服を被せて駅までダッシュするか――、昇降口でひとり決意を込めた影三の背後から、すっと傘が差し掛けられた。 驚いて振り向くと、そこには影三より頭半分ほど背の低い男子生徒が立っていた。自校とは違う制服、右頬に三つ並んだほくろが印象的な顔立ちだった。 「そのギター、大事なんだろ?」 そう言うと彼は、影三に自分の傘をぐいと押し付けて、校門へ向かって走り去っていった。こちらのブースもいかがですか? (β)
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