地下鉄の風は、どうしてこうも強いのだろう。ホームで次の各駅停車を待ちながら、一人考えていた。男はこれから、なまず君に会いに行くという。東海道本線の地下深くを這う幻の地下鉄に乗って……(『予光』)
私はただ歩くことにした。
羽虫も飛ばない薄闇の道を、濡れそぼった鼠のように。こうして歩いていればいずれ帰り道が見つかるだろう。
いつかの思い出せない夜の出来事。(『黒い赤ん坊』)
【収録予定作品】
〇掌編『黒い赤ん坊』(藤原千代)
〇表紙イラスト(藤原千代)
〇詩「もっとn+1であいろにー」(街の樹)
〇戯曲『予光』(街の樹)
〇グラフィックデザイン「延長線上には、星の誘惑」(街の樹)
〇短編『さるわたし』(藤原千代)
…and more…
【抜粋①】(『予光』より)
「あの、次の各駅停車は?」
「わかりません。5分後かもしれないし、10時間後かもしれない、1年後かもしれない」
「困ります」
「でも、来ます。必ず来ます。絶対に。あなたが生きている内に」
「それじゃ困るんです、いつ来るか教えてくださいよ」
「待っていればいいんですよ、必ず来るんですから」
「快速列車は、無慈悲な138億光年。膨張していく進歩のリズム。に、半音ずれているのが僕の心音……いつから、こんなに遅いんだろう」
【抜粋②】(『どうぶつ的な、あまりにどうぶつ的なわたしは』より)
「ねえ、聞いたよ。」
「……聞きたくない。」
「まだ何も言ってないじゃん。」
「聞いたよって言った。」
「じゃあ私が何言おうとしてるか分かるわけ?」
「分かるわけ。」
「あ、そう。」
「ねえ、鵜飼くんと別れたって本当?」
こちらのブースもいかがですか? (β)
株式会社新潮社(新潮ショップ) ラジオドウラクbyTBSラジオ 僕のマリ ナナロク社 第一芸人文芸部 本屋lighthouse タイムトラベル専門書店 ここは、おしまいの店 困ってる人文編集者の会 エリーツ