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アノモス

  • 第一展示場 | G-14 (小説|純文学)
  • あのもす
  • 加古精一
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 213ページ
  • 800円
  • 幼少期にカルトに誘拐され、時間では癒せない傷を負った主人公の半生を書いたフィクション小説です。以下、冒頭部分を掲載します。

    =============

     病室で目覚めた俺の元に、いつもと変わらぬ様子で男はやってきた。その顔を覆う黒い目隠しは、もはや素顔の一部だ。俺の上司であるその男、ゾレンは言った。

    「お前は、この国で最もやってはいけないことをやったな。わかっていると思うが、もうお前に自由はない。けれど、私には知りたいことがある。だからチャンスをやろう。自分がなぜ死んだのかを思い出せ。そうすれば、お前を再び自由の身にしてやろう」

     この国で、自殺は重罪だ。俺はあの時、確かに死んだはずだったが、ここにこうしているということは、死に損なったのだろう。自分がなぜあんなことをしたのかは、説明できない。その瞬間のことを覚えていないわけではない。そして、あのときその場にいたゾレンも、それは同じだろう。それなのに、何を思い出せと言うのだ。俺は忘れているわけではない。分からないのだ。

    「終わったことだ。どうでもいい」

    「お前にとってはそうだろうな。けれど、そうしなければ、私はお前を許さない。私かお前、どちらか一方が死ぬまでの付き合いだ。なぜあんなことをしたのかお前が思い出さない限り、一生飼い殺してやる。嫌だろう?」

     俺は何も答えず目を閉じた。かつて羨望の思いで見たこの男の傲慢さが、今はただ煩わしかった。

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