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蛇蠱の子

  • 第二展示場 Fホール | う-59 (小説|アンソロジー)
  • へびみこのこ
  • 瀬戸千歳
  • 書籍|その他
  • 24ページ
  • 300円
  • 2022/5/28(土)発行
  • 呪いの血筋、ふたりでの暮らし。


    『諸字百物語』【唆 そそのかす】に出てくるふたりの物語です
    1話800文字のお話が10篇入っています

    装画:橋本ライドン
    装幀:瀬戸千歳


    ▼▽ 試し読み ▽▼

    【2話・手に負えるうちは】
     泊まった部屋からは海が一望できたのだけれど、いたるところにお札が貼られていて思わず笑ってしまった。予約したひと部屋だけ明らかに価格設定がおかしかったから予想もしていたが、まさかここまでとは思わなかった。巳々花も「あちゃあ」とか言いながら一緒に笑う。テレビの脇や額縁の裏はもちろん、襖の奥や冷蔵庫と壁の隙間、果ては鏡のもっとも目立つところにさえあって、せめて隠す努力は惜しんでほしくないし、そもそも開かずの間にするべきでしょうに。こななん気休めやけんなんちゃ意味ないのになあ。巳々花がまだ新しいお札を剥がしだすので、アンタさすがに器物損壊やで、とたしなめる。
      大広間に用意された食事も私たちだけ豪華だったし接客もバカみたいに丁寧で、それはとてもありがたいのだけれど、もしかして人柱なのかしら、なんて思いはじめる。巳々花は気にしていないのか、瓶に直接口をつけて日本酒がぶがぶ飲んでいる。や、せめてお猪口を使わないと、ほら仲居さん引いてるって。

     卓球とスロットゲームに興じ、貸切の露天風呂から星を眺め、部屋へ戻ってだらだら飲み直し、いい雰囲気になったところで当然のように怪異が現れる。最初は無視を決めこもうとしていたのだけれど、ひとり、ふたり、と増え、しかもみんな目がこちらを向いているものだから、睦み合う気も削がれてしまう。ちょい早いけどもう寝よか、とふたりで並んで寝転がって目をつむってみても、ぼおおおおお、みたいな呻き声というか唸り声の合唱が耳から離れず、おちおち眠ることさえままならない。
      ちっ。ぶしつけな怪異がやってきてから、どれぐらい経ったのかはわからないが、巳々花の舌打ちが聞こえた。すると怪異のひとりがうずくまってのたうちはじめ、そのうち他の怪異も苦しみだす。それって人間以外にも有効なんや。私がつぶやくとまあ人型やから内臓くらいあるやろ、とそっけなく返される。「祓魔師とかで生計立てる?」私が笑ったら、人の形しとらんやつは寄らんようにしとる、手に負えんけんな、と静かに言う。


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