「この町も、沈んでいるんです。誰も気づいていないだけなんだ。 きっと、誰も空を見上げないからですよ」
新宿二丁目で荒稼ぎするレントボーイ(男娼)のタカを、心理カウンセラーのユウキが訪ねてくる。ユウキは失踪したクライアントのサラリーマン、ゲンの行方を探していて、かつてゲンに買われたことのあるタカに情報を求めたのだが、タカは挑発と嘲笑をくりかえすばかりで、なかなか心を開こうとしない。
一方、ゲンの妻のハツは、生活のために始めた清掃のアルバイトで、 物静かで優しい青年リキと出会う。 ハツにはリキが心の支えになっていくが、それを知ったユウキは驚き、 リキをハツに会わせまいとする。
タカはリキの自称「同居人」だった。それどころか、一見正反対の性格のこの二人には、さらに深い秘密があったのだ。
心の中に住む、他人。
〈本当の自分〉が見えないまま、それでも人は、人を愛する――。
樋口一葉の名作『にごりえ』を21世紀の新宿二丁目に置き換え、北フランスに伝わる海に沈んだ幻の都市イスの伝説と交錯させた、サイコサスペンス・ファンタジー。
2006年度文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作受賞。
『新鋭劇作集 19巻』(日本劇団協議会、2007年)に収録されましたが、その後大幅に改訂。本書が決定版となります。
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『沈める町』