何処までもどこまでも平べったく続く川口市の住宅街に毒されてしまった作者が、身震いするような閉塞感から逃れるためにリハビリとして書いた、コンセプトなど一切ないささやかな九編からなる短編集です。
夜の子供達を探したり
カメムシに噛まれたり
左腕の食べ方を考えたり
夜が吹き挙がったり
彼女が彼を構えたり
荻原陽と幸地みよとウィリアム・オーデンバークが全く同じ日に自殺したり
パラノイド・アンドロイドが似合ったり
先輩が薬莢を噛んだり、
強風に煽られて灰色のビニールシートごと宙を舞った耐震補強工事中の公団住宅の建築足場の一部が運悪く蟀谷に直撃して大迫が死んだりしますが、
そんなのは、決して誰も復活したりはしないこの世界にとっては、驚くぐらいに平凡なことなのです。