こちらのアイテムは2018/5/6(日)開催・第二十六回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第二十六回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

記憶槽

  • Eホール(1F) | C-31 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • きおくそう
  • 三日月 理音
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 130ページ
  • 300円
  • 2018/3/25(日)発行
  • 幻創文芸文庫さんに掲載した短編の一部再録となります。(『天にのぼる』は都合上なし)
    価格は300円です。幻創文芸文庫さんでも読めますので、紙媒体として手元に置きたいという方におすすめです。

    『これは王国の夢』…売れないアニメーターの夫を支える妻。妻の困窮を目にする夫。二人が出した決断とは?

    『雨の国への帰郷』…詩人・高平龍男の没後十年目に見つかったとある小説は理想郷への行き方を記していた。

    『カセットテープ』…学校の七不思議とぼくの亡くなった姉の話。

    『I/eye/愛』…愛と目と事件と祖母の話。

    以下、各短編冒頭部抜粋。(『I/eye/愛』は文字の都合上入らず)

    『これは王国の夢』
     いつもの日曜日。  芽以子は大きく深呼吸すると、まるで決闘に臨むかのように文字のかすれたリモコンの電源を押し込んだ。  ぱちぱちと大きな瞬きのあと、点ったブラウン管のテレビから暑苦しいほど元気な曲が流れてくる。そして、画面いっぱいに広がる赤い文字。 【ロックンローラーファイター】  子ども向けアニメだ。  このシーンを、アニメーターで夫の晃が描いたらしい。

    『雨の国への帰郷』                                                                                                                                                               糸のように細い雨が降り出す頃になると、その葉書はいつのまにか郵便受けに入っている。女中が持ってきた「祖先供養 雨之国御案内」と書かれた葉書を前に、しばし作業の手を止める。  私に祖先なぞいるのだろうか。私を産んだおんなはいるだろうが、それだって物心つく前に死に絶え、そうかといって父も亡く、私は一人で生きてきた。まるっきりの一人で。私はどうやら死なない身体らしく、何日も物を食わなくても腹は減らず、澱んだ水を飲んでも腹を下したことはない。チンピラに殴られた青あざもものの数分で治ってしまう。身体は頑健で、病気ひとつしない。  こんな私にどうやったって祖先がいるとは思えない。木の股からでも生まれてきたのだろう。
    『カセットテープ』

     カセットテープなんて骨董品をこんなところで見るとは思いもよらなかった。古ぼけた90分のカセットテープは行儀良くプラスチックケースに収まり『取材 1』とだけ書かれたシールが貼られていた。取材? この学校に取材をするような部活が昔あったんだろうか。――新聞部とか? 新聞部がどんなことをするのかすら見当がつかないけど。掃除に飽きていた僕はあっという間に古ぼけたカセットテープに目移りした。掃除を投げ出すと職員室からカセットレコーダーを借りて、再生ボタンを押した――

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