高校と小学校。二つの教室で紡がれる、教師と子どもたちの物語。
私立旭山高校で日本史を教える森山彩香は、教師九年目を迎えていた。初めての卒業生を送り出し、教師としての手応えを感じ始めた矢先、新たな壁が立ちはだかる。新年度、森山のクラスに一人の転校生がやってきた。鈴原滉大。大人への不信感を隠そうともしないその瞳に、森山は戸惑いを覚える。「先生なんて関係ない」と心を閉ざす滉大に、森山はどう向き合えばいいのか。
20年前。夕陽市立旭町小学校に勤める大鷹誠一のクラスに、一人の転校生がやってきた。森山彩香。人の気持ちを理解することが苦手で、転校初日から同級生とトラブルを起こしてしまう。「鼻血ぶー事件」として職員室中に知れ渡った彩香に、誠一は何度も何度も語りかける。
「どうしたい?」「どうすればいいのかな?」
答えを教えるのではなく、子ども自身が考え、答えを見つけることを信じて。
高校教師・森山彩香と、小学校教師・大鷹誠一の二人の物語が交互に語られ、やがて一つの真実へとつながっていく。
かつてトラブルばかり起こしていた少女は、なぜ教師になったのか。
心を閉ざした転校生の瞳の奥には、何が隠されているのか。
そして、卒業式の日に歌われる一曲の歌が、すべてをつなぐ——。
この物語は、現役の小学校教師と高校教師、二人の著者による共作である。学校種は異なれど、「主役は子どもたち」という教育観を共有する二人が、それぞれの現場で積み重ねてきた経験をもとに、一つの物語を紡ぎ上げた。
教室で起こる出来事は、決してドラマチックなものばかりではない。むしろ、日々の小さな対話の積み重ねこそが、子どもたちの心を少しずつ動かしていく。本作には、そんな「泥臭くも温かい」教育の現実が描かれている。正解のない問いに向き合い続ける教師たちの姿は、教育に携わるすべての人の胸に響くだろう。
タイトルの「あの日、言えなかった『ありがとう』」——それは、子どもから親へ、生徒から教師へ、そして教師から子どもたちへ。様々な「ありがとう」が交差し、物語は感動のラストへと向かう。
学級経営に悩む若い先生へ。
かつて自分を支えてくれた恩師がいる、すべての人へ。
そして、「ありがとう」を伝えそびれている、あなたへ。
読み終えたとき、きっと誰かに「ありがとう」を伝えたくなる。
そんな物語がここにある。