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いつかのレモンイエロー

  • A-12 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • いつかのれもんいえろー
  • 高野悠
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 102ページ
  • 500円
  • https://note.com/suityu_/n/nb…
  • 2023/9/10(日)発行

  • 空想の友人がいる主人公が出会った現実の友人と絵の具の青春。

    恋愛はない友情がメインの青春小説です。
    現実を舞台にしていますが、怖いことなんてなにもないような、穏やかに読める小説です。
    「ああ、あの時楽しかったなあ」のまさにその時を書きたいと思い書いた小説です。


     ◇あらすじ

      ヒナタには空想の友人がいる。友人と言うにはちょっと因縁があるので名前は『アイツ』。大学の入学式の日に迷った彼は、構内の端で放置された建物を見つける。外観をふらりと見学した後無事に教室に戻ったが、絵の具チューブのキーホルダーをどこかで落としたらしい。『アイツ』の物であるはずなのに、『アイツ』はもういいと言う。どうしてだろう。


     文学の授業が休講になった。どう暇を潰そうか考えていると、同じ学科のカナデを見つけた。彼女とは授業の前後で軽く話す程度の仲だ。二人は冒険と称してヒナタが見つけた建物へ向かう。それは旧サークル棟であった。窓の向こうにあの日失くしたキーホルダーを見つけ、建物に入り、ドアを開ける。

    「不法侵入」
     同時に窓から入ってきた青年が言った。




     ◇書き出し

     肌寒い気がする埃っぽい陽気を、僕は愛している。
     今日は昨日より暖かく、明日は今日より寒い予報だ。毎年四月は正月とはまた違った新しい気持ちになる。
    『入学式にはいい気候じゃあないか? スーツは脱ぎ着しにくいし、これくらいがちょうどいい』
     「アイツ」にそう言われて僕はパイプ椅子の上で身じろぎした。特別動きにくいというわけでもないが、試着室以来の着心地にはまだ慣れていない。椅子の、パイプ部分が布の向こうから冷たさを訴えてくる。
     人々が集まって、体温で緩んできた朝の空気で呼吸する。
     大学の講堂は、限りなく体育館に似ていて違っていた。今は緑色のシートに隠れて隙間からしか見えないが、床はワックスがけされた板張り。目の前のステージには校章の刺繍が施された布で飾られた演台がある。けれどもバスケットゴールはないし、体育や部活で使うような道具をしまうような倉庫も見当たらなかった。しいて言えばステージ横だろうか。
     しかし、そんな観察よりも、あまり使われていないのだろうと思わせる気配が講堂にはあった。ここで運動する気にはなれないな、と息を吐きながら僕は思う。
     妙に高い、ずっしりとしたコンクリートの三角屋根を眺めていると、ピントが合ったようにざわめきが気になった。
     人がたくさんいる、と当たり前のことを認識する。僕は僕の存在を場違いに思った。




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