今夜もあの酒場を訪れる。
それが自分の甘えだと知りながら……。
恋人・祐美との生活に疲弊した尚史は、クラス会に参加するための帰省にかこつけて、馴染みのスナック《美景》に立ち寄る。
そこで再会するのは、かつて十代の青春を分かち合った人だった。
名前を捨てて生きる男たち。彼らの過去に迫ろうとする男。恐れ知らずの好奇心が、ひた隠しにされ続けた歴史の暗部に光を当てる。愛する人のために、自分に残された選択肢は何なのか。
「それは私の幸せだな」
とある特異体質から人との関わり、自身の選択に自信が持てなくなった幸人は、自分のバーを持つことを夢に見る。ある日、馴染みのバーのマスター圭二の仲介で、女子大生の美空と出会う。渋々ながら関わりを持つ幸人だったが、美空との意外な共通点があることを知り……。
己が幸せを追う、欠けた心を持つ二人の恋愛小説。