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光溢るる

  • う-21 (小説|エンタメ・大衆小説)→配置図(eventmesh)
  • ひかりあふるる
  • 桧南たまき
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 48ページ
  • 300円
  • 2017/07/09(日)発行
  • 倭国という国の片隅、谷底に埋もれるようにして、その小さな里は在った。
    里で生まれた不器用な少女と、ある日唐突に里に現れた隻眼の青年。
    彼らの、ささやかな出会いの物語。

    以下、本文サンプル↓
    ---------------

     白銀の世界の中に何かが落ちる重い音がして、少女は足を止めた。
     年のころは十三か十四、年齢の割には些か小柄な少女だ。質素な着物に身を包んでいる。
     くせの強い紅の髪は肩よりも少し下までほうぼうに跳ねていて、瞳はまんまるな翡翠色だ。細い眉はどこか頼りなさげに見えるのに、それとは裏腹に、きつく引き結んだ口元が頑なな印象を与える。腰には、髪色と同じ紅色の獣の尻尾が生えていた。
     少女が目をやった先には、木の枝からぱらぱらと粉のように降る雪が見えた。それで、先ほどの音が、昨晩降り積もった雪が、今日の暖気によって幾分大きな塊になって木の枝から落ちた音だったのだと知る。
     視線を上に向ければ、黒々と伸びる木々の向こう側、細いながらも陽の光が少女のいる場所まで伸びていた。
     まだ、春はもう少し先のこと。
     空気は決して温いものではないけれど、ここしばらく見ない良い天気だった。
     少しの間、そうして上方を見上げていた少女は、やがて前へ向き直った。
     薄暗い薪小屋に足を踏み入れて、自分の手で抱えられるだけの薪を取って再び小屋を出る。
     抱えた荷の重さに、足取りは、先よりもわずかばかり慎重に。
     来た道をゆっくり辿って戻る少女の背で、くせの強い髪と紅色の尾が、小さく揺れた。

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