書類は、人を縛るものじゃない。人を守るための、形なんだよ。
柿興市。駅前商店街の古いビルの二階に、小さな事務所がある。看板にはただ一言——『代書屋いんく』。
持ち込まれるのは、契約書、申請書、卒業証書。どれも味気ない紙のはずなのに、そこには必ず、誰かの決意が隠れている。代書屋・朱野音九は万年筆を手に取り、言葉にならなかったものを書類の形に変えていく。
春の契約書から、秋の申し送り書まで。季節がひとめぐりするあいだの、九つの依頼の記録。
◆こんな方に
・日常のなかの、静かな救いが読みたい方
・手紙、書類、万年筆といったモチーフが好きな方
・連作短編でひとつの街を歩くように読みたい方
◆表紙の仕掛け
本の表紙で、彼女は目を閉じています。同時頒布のCDジャケットを重ねると、目を開けて笑います。ぜひブースで確かめてみてください。