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滋賀怪談 近江奇譚

  • せ-65〜66 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • しがかいだん おうみきたん
  • 旭堂南湖
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 224ページ
  • 781円
  • https://kyofu.takeshobo.co.jp…
  • 2023/3/29(水)発行
  • 竹書房怪談文庫

    血生臭い歴史が繰り広げられ現在も怪異が多発する、滋賀県!

    「怪談最恐戦」にも参加、独特の怪談話を披露した話術の巧みである、滋賀県出身の講談師、旭堂南湖。
    地元愛を爆発させつつ歴史ある滋賀の怪談奇譚を書き綴った怪談本。

    棺桶に遺体が入らないので力任せに手足を曲げたら…〈甲賀市〉
    床下から首のない地蔵が掘り起こされた! 〈東近江市〉
    譲り受けた茶道の釜に老侍の生首が…〈長浜市〉
    漁をしていたら全身が透き通った死骸が浮かんでいた〈琵琶湖〉
    家賃の安いマンションに引っ越したら、事故物件だった〈大津市〉講談口調で怪談を綴る「講談・村正の鎌」も収録。

    じんわり怖いと不可思議が詰まった滋賀を堪能あれ。

    耳によみがえる音(甲賀市) より抜粋

    令和の現代では、人は死ぬと火葬場で焼かれる。しかし甲賀市では、現在でもごくわずかだが土葬の風習が残っている。これは非常に珍しいことだ。
    九十歳になるOさんは、祖先はもとより、祖父母や両親も土葬だった。
    本人も土葬を希望しているが、息子さんや娘さんは火葬にしたいと言っている。
    土葬は火葬に比べて労力がかかって大変なのだ。棺桶を埋めるために土を掘らなければいけないが、これが重労働。しかも土を掘ると遥か昔に土葬された骨が出てくるので、場所を探すのも大変。そして棺桶は火葬の時に使う寝棺ではなく、座棺である。
    亡骸は座棺の中に胡坐で合掌をさせるのだ。
    Oさんはこどもの頃の葬式の記憶を話してくれた。
    野辺の送りの時。田んぼの畦道を大勢の人が皆、黒い服を着て歩いている。賑やかそうに感じたのは、大人に混じって大勢のこどもも歩いていたからだ。こどもたちは後でお菓子が貰えるから一緒についていく。
    青空には大きな入道雲があって、カラスが十数羽、ギュエェーギュエェーと奇妙な鳴き声を上げながら飛んでいる。
    ぼんやり葬列を眺めるOさんのねき(隣)に、いつの間にか白い着物のお爺さんが立っていた。Oさんがお爺さんの顔を見上げて訊いた。
    「誰のそうれん(葬式)やろ」
    「わしじゃ」
    お爺さんが行列に向かって歩いていき、Oさんはその場に尻もちをついた。

    また、こんな記憶も話してくれた。
    Oさんの祖父が亡くなった時のこと。当時としては珍しかったのだが、祖父は身長も高いうえにたいそう太っていた。座棺は大きさが決まっていて、昔ながらの小柄な日本人なら納まるが、大柄な祖父の体が入らない。そのうえ死後硬直も起こっている。
    親類のおじさんが、
    「おっさん(和尚)が来て念仏を唱えたら、体がタコみたいに柔らかくなる」というので待っていると、和尚がやってきて念仏を唱えて祖父を座棺に入れようとする。しかし、ガチガチに固まった大きな体はどうにもならなかった。
    「しゃあないな」
    親類のおじさんが、力任せに関節を折り始めた。
    ボキッ、ボギィイ、ボォギィ――
    無理やり祖父の体を折っていると、突然、祖父の口から、
    「グゲェ、グゲェ」
    蛙が鳴くような声が漏れた。

    ――続きは書籍にて

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