私はお遍路に行ったことがあります。
お遍路とは、四国八十八ヶ所霊場巡りのことを指し、お大師さん、弘法大師空海の足跡を巡る旅です。
空海は真言宗の開祖ですが、お遍路は宗旨宗派を問わず多くの人々が巡拝しています。
行く方法が色々ありまして、観光バスで行く、自家用車で行く、自転車で行く。昔ながらのやり方ならば歩いて行くというのもあります。
最近では、パソコン上にグーグルマップを表示し、マウスを使ってグルッとなぞる方法もあるそうです。約三秒で回れるので一番早いです。あんまり値打ちはございませんが……。
私はどうやって行ったかと申しますと、歩いて行きましてね。四十三日かけて八十八ヶ所を回りました。
歩き遍路をするには、三つのことが必要と言われています。
時間と健康とお金。
普通、勤め人は一か月半も仕事を休めません。実際に歩いている方の多くは、定年退職した方や仕事を辞めた方でした。私が出会った最高齢の方は八十二歳でした。
時間があっても、体力がなければ難しいでしょう。
お遍路の長さは千二百キロとも千四百キロとも言われています。一日二十キロから三十キロも歩きます。
たとえば大阪環状線一周が大体二十キロです。
三十キロ歩くとしたら、大阪駅からグルッと一周して、さらに天王寺駅まで歩くことになります。この距離、電車に乗っているだけでも疲れますよ。また、天気のいい日ばかりではありません。雨の日も風の日も歩き続けるのです。健康でなければ難しい。
それにお金も必要です。遍路宿に泊まったり、三度の食事を取ったり、納経をするのにもお金がかかります。一日一万円ぐらいはかかりますので、日数が延びると、それだけお金もかかるわけです。
私の場合、幸いなことに時間と健康はあったのですが、お金が乏しかった。
多くの方に助けていただきまして、なんとか歩き通すことができました。
歩き遍路の道中は決して楽なものではありませんでした。長い距離をひたすら歩き続け、体力の限界を感じる日もあれば、冷たい雨の中で立ち尽くし、心が折れそうになる瞬間もありました。そんな日々を支えてくれたのは、道中で出会った人々の優しさ、お接待の有難さ、旅の途中で見た四国の美しい風景、そして私のお遍路を応援してくださった皆様のおかげです。
本書を通じて、お遍路の魅力を少しでも感じていただけたなら幸いです。そして、まだお遍路に行ったことがない方が、これをきっかけにいつか四国の道を歩いてみたいと思ってくださるなら、これほど嬉しいことはありません。
最後になりますが、この旅を支えてくださったすべての方々、そして読者の皆さまに心より感謝申し上げます。