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文学フリマ大阪13出店者
へちまとろん(ブース: き-27)
別冊オオマガ 河童
こちらのアイテムは2025/9/14(日)開催・
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くわしくは
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別冊オオマガ 河童
き-27 (小説|ホラー・怪奇)
べっさつおおまが かっぱ
忌木一郎 久世空気
書籍|A5
34ページ
400円
2019/9/8(日)発行
河童漫画河童小説河童旅行記……ただただ河童を楽しむ1冊です。
(小説一部抜粋)
1か月前、寄合から帰ってきた父がいつも以上に無口だったから、何事かと緊張していたら、「お前、人身御供になるか」と言われた。人身御供と聞いて一瞬ぎょっとしたが、そう言えば、この辺の集落では、川の氾濫した次の年は十五、六の男を川の神様に捧げるというしきたりがあった。ただ一晩川の神様が祀られている社にいるだけでいいらしい。 「要するに肝試しみたいなものよね」 という楽観的なことをいう母を、父は珍しく睨みつけた。母は堪えていないようで、俺に向かってペロッと舌を出して見せる。 「父さんも昔したことあるのよ」 と母が言う。 「そうなの? どうだった?」 俺が訊くと 「その晩のことは一切口外してはいけないことになっているんだ」 と、むすっとした顔で何も参考にならないことを言った。 「要するに怖くておねしょしても、泣いても、黙ってていいのよ」 また母がおどけていったので再度父に睨まれていた。 「この辺だとお前しか条件が合う男がいないんだよ、するか?」 「それって断れないじゃん」 俺が言うと、そうだなと何とも言えない顔で父が頷く。 「あれ? ヤスカワさんちのお兄ちゃんもいるじゃない」 母が言う。俺はそんなことよりおかずの生姜焼きが美味いという顔で口いっぱいに頬張った。 「カイ君は十年前に勤めを終えてる」 「そんなに年が離れてたかしら」 あらやだというように、母が口に手を当てる。 「あそこは妹のミズキちゃんがリョウタと同じ年だよ」 俺は咀嚼しながらうなずいた。
ミズキは昔から快活な女子だった。それは高校生になった今でも変わらず、校内ではかなりファンもいるようだ。サッカー部のマネージャーをしているのも要因だろう。ミズキと俺は同じ集落出身で仲が良かったが、高校生らしくあまり親しく見えないように気を付けていた。しかしそれでもミズキの方は地元にいればよく話し掛けてきた。 その日も下校時のバスの中で会話をした。 「リョウタって人身御供するの?」 俺はあいまいにうなずいた。 「え? するの?」 「なんか、するみたい」 と答えるとミズキはカラカラと笑って俺の背中を叩いた。 「なんでそんなに嫌そうなの! ただ一晩お社に寝泊まりするだけでしょ!」 「嫌じゃないけど、なんか気持ち悪いだろ」 「怖がりだなぁ。うちのお兄もやったんだよ?」 俺は聞こえないふりをして 「川の神様ってどんなだろう」 と言った。 「河童だってお母さん言ってたよ」 「それは妖怪だろ」 「妖怪も神様みたいになることがあるんだって」 去年の川の氾濫を思いだす。この辺一帯避難指示が出て、俺も両親と一緒に少し高いところに立っている小学校に避難した。結局大した被害はなく、床下浸水した家が何件かあったみたいだけど、けが人も死人も出なかったと聞いている。俺たちが生まれる前にこの辺りは田んぼや畑もほとんどなくなったそうだ。もしまだ農業をしていたらそっち方面で大きな被害があったのかもしれない。きっとそのための人身御供なんだろう。 「河童って人、食べるのかな」 「食べないよぉ。お兄だって食べられてないんだから。なんでそんなに怖がるの?」 とミズキはまた笑った。 「いや、人身御供って言葉がちょっと不吉じゃねえ?」 あー、確かにね、とミズキが頷く。 「大昔は人を川に投げ込んでたのかも」 「そういうのって普通女子じゃねぇの?」 「河童だからさ、相撲取れる男子の方が良かったんじゃない?」 今度は俺が「あー」と言った。 「じゃあやっぱり河童なのか」 「もしかしたらお兄たち、お社で相撲取らされたのかもね」 あっけらかんとしたその口調に、俺は少し気持ちが軽くなった。(続きは本誌で)
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