【収録内容】
4つの短編BL小説を収録。
1.「白虎の血族」(中華ファンタジー)
2.【書き下ろし作品】「古傷ごとあなたを愛す」(洋風ファンタジー/義賊×料理番)
3.「雪に埋もれた状況でHするの? 考える時間が欲しいんですけど!」(現代リーマンもの)
4.「いっそ打ち明けてしまいたい、好きだと!」(高校生/神社の息子×取り憑かれやすい高1男子の短編)
【書き下ろし作品について】
「くっ、殺せ!」と叫ぶ義賊 × 拷問シーンを覗き見して一目惚れした料理番の青年
攻めと受けが追っ手から逃げる逃亡劇です。(ラブシーンあり/ハピエン)
【サンプル】 古傷ごとあなたを愛す
「イルヴァ山の守護神と恐れられたダグラスも、鎖に繋がれては形無しだな。隠した財宝のありかを吐いたらどうだ? どうせこの先助かりはしない」
鞭のしなる音が聞こえ、痛みを耐える「グッ」というくぐもった声が聞こえてきた。
「くっ、殺せ。いっそひと思いに殺せ!」
長い鎖で繋がれた男が吼えると、空気がビリビリと振動する。ダグラスと呼ばれた男は鞭に嬲られ、上半身は服の端切れだけだ。長い黒髪は手入れされていないのだろう、たてがみのように広がっている。日焼けした肌に汗が粒になって浮かんでいて、ズボンとブーツには血や煤がこびりついている。
岩の隙間を覗いていたルークは、篝火(かがりび)に照らされた光景に釘付けになった。
「古い城だとは思っていたけど、地下に拷問部屋があったなんて……」
火打ち石を探しているうちに、昨日から拝借している古城の地下に降りてきてしまった。良さそうな石が見つかったあたりで、声が聞こえてきた。その方向へ導かれていくと、岩の隙間から拷問部屋がのぞけるようになっていた。
「お前はこの先警察に引き渡される。どのみち殺されるなら、俺達に財宝を譲るくらいの善行をしてくれよ」
「お前らはハイエナだ、そんな奴らに施すつもりはない……ぐああっ!」
傷口を狙って鞭打たれ、悲痛な叫び声が上がった。
「痛かったか? すまんな、手が滑った」
「この卑怯者……!」
捕らわれた男の琥珀色の瞳からは怒りが溢れ、鋭い眼光でルークの仲間を睨みつけている。捕らえられた野生動物を思わせるダグラスに勝る生命力を、今まで見たことがなかった。
「あの人が義賊ダグラス。本物なんだ。格好良い……」
口を突いて出た言葉に、自分でも驚いた。捕まえたばかりの盗賊団の首領を格好良いだなんて、下働きが言うことではない。だれかに聞かれでもしたら処罰されかねない。
でも、なんて綺麗な色の瞳なんだろう。松明(たいまつ)の光を受けてキラキラと輝いている。まるで宝石みたいだ。
彼を助けたい。あんなに凜々しく気高い人が殺されるなんて駄目だ。助けないと、一生後悔する。
【サンプルここまで】