ある裁判
人類が銀河に版図を広げつつある時代に、ある裁判が行われた。
それは戦争犯罪の中でも特に批判される、人道に対する罪。
被告は資源採掘型コロニー「フロンティアⅢ」の壊滅及び、周辺軌道上にあった他のコロニーへの被害、軍籍に就く者たちふくめて七万人を殺害した罪に問われている。
この日、地球のある都市で開廷した案件は世界中どころか、コロニー都市のすべてから注目が集まっていた。
これが世界初となる、『クローン体』に罪を問うものだったから。
「それでは開廷します。原告は入廷してください」
初めて公の場に姿をあらわした被告に、何億という倍率を潜り抜け、傍聴席に座った者たちが息をのむ。一人一人はただの呼吸だったが、全員分のそれは、一瞬、波のように法廷内に響く。
無機質な外見のワーカロイドが車椅子を押して入ってくる。座面に座っているのは華奢な少女だった。くすんだ紅茶色の髪、同色の瞳。肌は白いというより青白い。オレンジ色の囚人服は一番小さいサイズなのだろうが、それでも肩が落ちそうなほどだぶついていた。
そして、座面から降りている両足部分はぺらぺらとたよりなく揺れている。
少女の下肢は、過去に失われていた。そして、両手の握力もほとんどない。
立ち上がることも、物をつかむこともできない少女は証言台に立つことはできなかった。そのため、車椅子は背もたれの高い特殊なものになっている。
最初に、裁判官が人定質問を行う。
「氏名と生年月日は?」
「─名前はありません。私の原型の名はカレン・ロックスですが……私は『四番』と呼ばれています」
その日から人類圏では、「複製体に人権に相当する権利は発生するのか」また、「人間として規定されていない存在に罪は問えるのか」という議論が巻き起こった。
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summary 招福来猫 未明の藍 教授会 七月のなまけもの NORTHERN SPIRIT M&Gカンパニー MYST&CLAST 朝焼けが来る前に Aphelion