こちらのアイテムは2023/9/10(日)開催・文学フリマ大阪11にて入手できます。
くわしくは文学フリマ大阪11公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

国村くんと龍太くん

  • I-36 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • くにむらくんとりゅうたくん
  • かのこ
  • 書籍|A5
  • 38ページ
  • 500円
  • https://plus.fm-p.jp/u/bonjir…
  • 2023/9/10(日)発行
  • とある高校の不良グループの国村くんと龍太くんのお話。 とくに不良してる描写はなくて、ただただ二人がイチャイチャしてるだけです。 国村くんが攻めで、龍太くんが受け。
    一話ずつ独立しており、お話はつながっていません。
    【仕様】
    コピー本/A5サイズ/表紙フルカラー・本文モノクロ/38ページ(表紙込み)/2023.09.10
    全6話


    収録作品サンプル
    【つばめ】
    ツバメが低く飛ぶと雨が降る。
     地を這うように飛行するツバメを見ながら、思い出したように国村くんが言った。
     確かによく聞く言葉ではあるけれど、オレはそれを全く信じてなかった。
     偶然かあるいは相当運が悪いか。
     それだけだと思っていた。
     だから今回もそうだと思って、賭けをした。
     国村くんの言葉はいつも正しいから不安だったけど、オレは自分の信念を曲げたくないから頑なに雨は降らないと主張する。
     頭上を覆う、分厚い灰色の雲にも気付かずに。



     今回の事で分かったのは国村くんの言葉はやっぱり正しくて、ツバメはオレよりも何倍も賢いということだった。



    「あーあ、もうどうすんだよ」
     ずぶ濡れになって駆け込んだ公園にあるたこ山の中。
     お前のせいだぞとでも言いたげな国村くんに、オレは小さく舌打ちした。
     結局賭けに負けたオレはハンバーガーを奢ることになった。
     その時点ではまだ小雨程度だったのだけれど、店を出ていつも別れる公園に差し掛かると、土砂降りの雨に変わってしまった。
     逃げるように公園の中にあるタコの形をした遊具の中に避難したけど、パンツの中までぐっしょり濡れてしまったのだった。
    「お前が悪いんだからな」
     スポーツタオルで濡れた身体を拭きながら、国村くんが睨んでくる。
    「お前があの店でキッズメニュー頼むとか駄々を捏ねなかったら本降りになる前に帰れたんだからな」
    「別にオレが自分で金出したからいいだろ、文句言うなよ、ばーか!」
     ネチネチ言ってくる国村くんに反論して、オレはハンカチで顔を拭く。
     タオル持ってきたらよかったなぁ、と後悔していると盛大な溜息が聞こえて国村くんに腕を引っ張られた。
    「ったく、風邪ひくだろ」
     自分の事もそこそこに、使っていたスポーツタオルで髪を拭いてくれる。
     口は悪いけど、オレにだけは優しい顔を見せてくれるから凄く嬉しい。悪ぶってはいるけど、本当は面倒見が良くてあったかい一面があることをオレは知ってる。
    「ほら、もう自分でやれよ」
     タオルをオレの肩にかけて、背中を向ける国村くん。
     ワイシャツとTシャツを脱いで絞って乾かしているそのカラダは、高校生にしては筋肉質で少し羨ましい。
     ムキムキで引き締まってて、そりゃあ喧嘩も強い筈だ。
     だからふとその筋肉に触れたくなって、そっと広い背中に抱き着いた。
    「なんだよ」
    「国村くんがカッコ良くて、つい」
    「ハァ? 何言ってんだよ」
     ばかじゃねぇの、と悪態付いてるけど、どこか嬉しそう。こんな照れ屋なとこも国村くんの魅力のひとつだ。
     好きだなあ、こういうとこ。
    「お前は」
    「え」
    「脱がねぇのかよ」
     いつの間にかこっちに向き直っていた国村くんがそう囁く。
     熱い手がTシャツの中に入ってきて、お腹を撫でてきた。
    「エロいことしようって訳じゃねぇんだ。別にいいだろ」
     エロいことしたいとデカデカと顔に書いたままそんなこと言われても説得力がない。
     仕方なく言われるままに上半身裸になると、わざとらしく国村くんが口笛を吹いた。
    「お、ちったぁ筋肉ついたか?」
    いやらしい笑顔を浮かべてオレの腕や胸、お腹をペタペタ触ってくるから擽ったくて身体をよじる。
     オトコの身体なんて触っても嬉しくないだろうに。
    「やめろよ、気持ち悪いなあ!」
    「いいじゃねぇか、遠慮すんなよ」
    「キメェんだよ、ばーか!」
     国村くんの手を払って逆に触り返してやる。
     同じように胸とかお腹を触れば国村くんはケタケタ笑った。
    「くすぐってぇ」
     半裸のオトコが2人、くすぐりあってる様はすごく滑稽。
     暫くの間、バカみたいなことをしてたけどだんだん肌寒くなってきたから情けないなと笑いながら服を着た。
    「雨止みそうにねぇなぁ」
     空を見上げる国村くん。
     オレも習って見上げようとすると、スマホの着信音がなった。母親からだ。慌てて電話に出る。
    「おふくろさん?」
     電話を終えたオレに国村くんが控えめに声を掛けてくる。
     その眉間にはシワが寄ってて、如何にも嫌そうなのが分かった。
     オレの『かていのじじょー』を知ってるから、変に勘ぐったのだろう。
    「国村くんが思ってるような事じゃないから」
     安心させるように笑って国村くんの髪を撫でた。
    「車で迎えに来てくれるって」
     そう言うとようやく、国村くんは表情を和らげてくれて一安心。
    「だから国村くんも一緒に」
    「俺はいいよ。走って帰るから」
     言うが早いか、国村くんはぺしゃんこのカバンを引っ掴んでたこ山から飛び出す。
    「国村くん!」
     呼び止めるけど国村くんは、じゃあなと手を降って、カバンを頭に乗せて走り去った。
     あっという間に見えなくなった背中。
     呼び戻そうかとスマホを開くけど、それよりも早く母親の乗った車が公園の前に止まって、クラクションを鳴らす。
     仕方なく車まで走って乗り込むと、母親がタオルを渡してくれた。
    「あのさ」
     友だちが、と言いかけてオレは口を噤む。
     多分、今から行っても間に合わない。電話にも確実に出ないだろう。
     どうしたのと首を傾げる母親に首を振って、適当にタオルで身体を拭く。
     ラジオから流れる天気予報に耳を傾けると、どうやらこの雨は明日までやまないそうだ。
     国村くんが風邪をひかないといいな、などと思いつつオレはリクライニングを倒して、車の振動に揺られながら眠りに落ちた。







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