怪盗にはなれないけど、探偵にはなれる。
大真面目にそう言ったら、友人から「どういう二択やねん」とツッコミを受けた。
転職活動をしなければならない。どうせするなら興味のある職種を受けてみたい。切羽詰まった状況であれば受かりそうな職種と希望を擦り合わせて活動するところだろうけど、幸いまだそこまで追い詰められてはいない。ならば今のうちに面白半分で受けてみたい企業を受けてみようと思った。
というわけで、ハローワークの窓口を訪れた。
「どういった仕事をお探しですか?」
いかにも真面目そうな女性職員の方に聞かれて、私は答えた。
「探偵になりたいんです」
「え~! 何それ、めっちゃおもろい」
職員の方は、別にそこまで真面目キャラではなかったらしい。
彼女はノリノリで相談を受けて、事前に見て気になっていた探偵事務所の求人について追加の情報をくれた。その企業をAとする。
「Aには男性が二人応募していますが、どちらも不採用になったみたいです。心配なさっている、ブラック企業だとかそんな記録はないですね」
ハローワークってそんなところまで教えてくれるのだと初めて知った。
受けてみたいとお願いすると彼女は早速に電話をかけて、応募の段取りを整えてくれた。数日以内に履歴書と職務経歴書を送ってください。書き方はわかりますか? 職務経歴書は初めてですね。この冊子のこの見本のように書いたらいいですよ、と説明をしてくれた。
私はその冊子を受け取って、早速帰宅し、書類の準備に取り掛かった。
心配だったのは、不採用になった男性二人について聞かされた理由が「経験不足」ということだった。
探偵の経験なんて一般人にあると思っているのか?
ま、私はあるけど。
正確には探偵として活動したことはないが、気になることを徹底的に調べるといった経験はある。そういえば聞こえはカッコイイが、いわゆる「特定」である。同義語は「ネットストーカー」だ。(私の場合は炎上に加担するようなものではなく、あくまで自分の気になることを調べ尽くすという意味です)
こんなもの一般企業で言っても気持ち悪がられるだけだろう。しかし探偵に相応しい「経験」としてはアピールになるかもしれない。そう思って、過去の所業を書き連ねた。
詳しい内容については後で書くが、こんなふざけた職務経歴書を書くのは初めてだった。たぶん相手方にもふざけたやつが応募してきたと思われたことだと思う。
一週間後、見慣れない電話番号から電話があった。Aの採用担当者だった。事務的に面接の日程が決まり、数日後にオフィスへ伺うこととなった。
さて、面接に向けてやるべきことがある。
そう。ネトストです。
ひとまず採用担当者のフルネームをSNSで探したが、さすがに普段から気を付けているのか、はたまた仕事用の偽名なのか、ネット上に痕跡は一切見つからなかった。
次に、企業サイトを開く。社長ブログとスタッフブログがあり、それに目を通す。さほど頻繁に更新されているものではないので、一晩で八年分さかのぼった。探す作業もなくさかのぼるだけなら楽勝、楽勝。
そのブログから得た情報は「面接では抜き打ちで筆記試験と小論文の課題をしています」「求める人材はこんな人です」「こういうタイプの人は採用しません」「このような質問を必ずしています」などであった。この時思った。
大学時代の就活で企業研究ってよくわかってなかったけど、ネトストすればよかったんだ!
(続く)