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草海 空海

  • C-05 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • くさうみ そらうみ
  • 加条きりえ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 144ページ
  • 500円
  • http://kototuduri.blog130.fc2…
  • 2016/7/23(土)発行

  •  眠りから覚めたミンニは、ぼんやりと天井を見つめる。室内は暗く、燭台皿の灯心が時折、ジジッと音を立てて燃えていた。  ひどい倦怠感と浮遊感。とても、起きあがる気にはなれない。まるで、あの冬の日の再来のようだった。

       二つ前の季節に、ミンニは恋敵と対峙した。自分よりもずっと小さく幼い娘だった。女として、負ける要素などどこにもなかったはずだ。
      けれど、負けた。完膚なきまでに、圧倒された。欲しがるだけで、自分からはなにも動こうとしなかった自分の怠惰を、眼前に突きつけられてしまった。しかも打ちのめされると同時に、ほんのわずかに理解してしまったのだ。彼女の想い人が、あの娘を選んだ理由が。
      誰もそうとは言わないけれど、レンエンで療養が出来るように手を回してくれたのも、あの娘だ。恨み辛みよりも、ただただ惨めだった。
      器が。見ている世界の大きさが、違いすぎた。
      本当に惨めだった。

      (「草海 空海」本文より)
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    転地療養にと訪れた草原の町。恋に破れ心を病んだミンニは、多くの人と文化が入り混じるその地で小さな友ヤークムと、交流を深めていく。

    架空の多民族国家タンムーヴァの片隅で、立ち直り、己を律しようとあがく女性の成長譚。


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