紹介文
浅草は「雨街」と名前を変えた。
一〇年前、大国との戦争によって降り注いだ科学物質の雨は、人々の身体を蝕んだ。遺伝子を壊され、子供を残すことができなくなった男女は、理由も分からないままお互いを愛し、傷付けていく。 辻村ヒビキは孤独だった。「ヒトガタ」と呼ばれる生物を殺しながら、退廃的な日々を送る彼の元に、今日もあの日と同じような雨が降る。いなくなった想い人の影を振り切りもしないまま、彼は身勝手で、中途半端な孤独に身を浸していく……。
収録内容
01「雨」 「ヒトガタ」を殺す仕事を、同僚のスズネとこなしていくヒビキ。ハイパーループ(超高速鉄道)の事故地で起こるヒトガタとの戦闘は、彼ら「雨」を浴びた者の独壇場であった。 仕事を終え、水上バスで「雨街」に戻るヒビキを迎えたのは、戦争の直後からずっとともにに暮らしていた、ショートカットの女の子だった。
02「外套」 「雨」をもたらした戦争が起きてから一〇年。開戦記念日にヒビキは辻村家を訪れていた。テレビに映し出される過去の戦傷の街々。 雨街で行われる慰霊祭に連れられた彼と、雨樋にいるスズネには共通して想う街の色合いがあった。
03「深海魚」 ハイパーループの事故現場、お台場駅地下八階へと探索を敢行するヒビキたち。奥に進めば進むほど、ヒビキの身体能力は向上し経過は安泰に思えた。 最深部には、ヒトガタとは似てもにつかない、白い巨人が鎮座して、ヒビキたちと対峙することになる。
04「廃品回収」 ヒビキの元恋人、そして義理の姉であるチトセが見つかった。「雨」を浴びたものがいずれ発症する「雨下症」に犯された彼女は、彼にとっては出会うはずのない幽霊そのものだった。 さらに、辻村家とヒビキの間にある色欲は、想像以上に彼らを蝕んでいたことが分かっていく。知らなければ良かった肉体関係は、いつも同じ屋根の下にあったのだ。
その他情報
表紙イラスト イツミミタ
著者 転枝
サークル 木の葉スケッチ
サイズ 文庫
ページ数 230
装丁 表紙一色塗り カラーカバー付き
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