文学の授業が休講になった。どう暇を潰そうか考えていると、同じ学科のカナデを見つけた。彼女とは授業の前後で軽く話す程度の仲だ。二人は冒険と称してヒナタが見つけた建物へ向かう。それは旧サークル棟であった。窓の向こうにあの日失くしたキーホルダーを見つけ、建物に入り、ドアを開ける。
「不法侵入」
同時に窓から入ってきた青年が言った。
肌寒い気がする埃っぽい陽気を、僕は愛している。
今日は昨日より暖かく、明日は今日より寒い予報だ。毎年四月は正月とはまた違った新しい気持ちになる。
『入学式にはいい気候じゃあないか? スーツは脱ぎ着しにくいし、これくらいがちょうどいい』
「アイツ」にそう言われて僕はパイプ椅子の上で身じろぎした。特別動きにくいというわけでもないが、試着室以来の着心地にはまだ慣れていない。椅子の、パイプ部分が布の向こうから冷たさを訴えてくる。
人々が集まって、体温で緩んできた朝の空気で呼吸する。
大学の講堂は、限りなく体育館に似ていて違っていた。今は緑色のシートに隠れて隙間からしか見えないが、床はワックスがけされた板張り。目の前のステージには校章の刺繍が施された布で飾られた演台がある。けれどもバスケットゴールはないし、体育や部活で使うような道具をしまうような倉庫も見当たらなかった。しいて言えばステージ横だろうか。
しかし、そんな観察よりも、あまり使われていないのだろうと思わせる気配が講堂にはあった。ここで運動する気にはなれないな、と息を吐きながら僕は思う。
妙に高い、ずっしりとしたコンクリートの三角屋根を眺めていると、ピントが合ったようにざわめきが気になった。
人がたくさんいる、と当たり前のことを認識する。僕は僕の存在を場違いに思った。
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