おととしの文学フリマ大阪で創刊した小説アンソロジー誌『NUT's』の第2号です。
今回のテーマは「SLIPPING THROUGH THE FINGERS(指のあいだをすり抜けていく)」です。
するりするりと零れ落ちていこうとするものを、どうかいっしょに掴んでいてください。
~収録作品~
◎中山文花「春の青いところにふれて」
なにげないやりとりをいずれ忘れてしまったり、恋人と呼ぶ関係の相手に、思っていることを伝えられなかったりすることの淋しさを思う。
菜純は同級生の青嗣とつき合っている。菜純は彼が、以前の恋人のことをまだ好きなのではないかという不安を感じながら、それには触れることができないでいる。あなたのことを知りたいと思うのは、春の光に触れたがるのと似ているかもしれない。
◎雨上そら「Eating donut, Leaving hole.(形式不可能形態)」
素手で幽霊を殴れる女の子がいる。深夜、彼女のストーカーから、彼女の姿が見えないんだと連絡があったら君はどうする? ああそうだよ、いつも通りで、無論な答え、その女の子は僕の同僚で、ストーカーは上司なもんだから、僕は真夜中の迷子探しに出かけたんだ。真夜中の探索が怖くないかって? 怪奇現象が起こる? 霊媒士なら喜んでとんでいくよ。睡魔に襲われる真夜中じゃなかったら、だけど。
◎芳原わらび「ぼくもわたしもきみが好き。」
希輔くん。すき。
本屋さんで愛砂さんと子犬の写真集を見たり、CDをながめたり、すきな本を教えてもらったり……たのしくて、ちょっと照れるようなデートだった。でも、愛砂さんはいなくなったひとを追いかけるのをいとわないひとだから、ちょっと困っていたりもする。
「おれ」は嫌いなショパンを弾きながら、夏休みのできごとをおもいだす。あのころは、希輔といっしょに校舎中をめぐっていた。
◎悠音「放課後の選択」
冬の放課後。教室にひとり残っていた若菜に化学担当・前田は言った。
「今から準備室へ行くんだが、手伝ってくれるか」
ふたりの関係上、それは言葉どおりの意味じゃない。
しかし特別な甘さもなく、若菜は答えをはぐらかす。
日常の中の些細な選択。
ひとつの恋の終わりとはじまり。
(表紙デザイン:山田ひとみ)
*価格*
500円
*文学フリマ限定アイテム*
『NUT's 02』の冊子をご購入いただいたかたにしおりをプレゼントします。
販売部数15部となっておりますので、お早めに。
(しおりデザイン:山田ひとみ)
*web版*
noteにてweb版の販売もおこなっております。
気になる1作品からご購入いただけますので、こちらもぜひご覧ください。
《小説篇》
https://note.mu/nuts_novels/m/m3ce7fab55d82《シナリオ篇》
https://note.mu/nuts_novels/m/m9084a47aba45