瓦町にあるブックカフェバー「珈琲と本と音楽 半空」の主催する、A4用紙1枚に物語を綴る「半空文学賞」。その第8回目の入賞作品集です。
今回のテーマは「栗林公園」。僕は今回編集長として、装丁や内容の編集、あとがきを担当させていただきました。
入賞作品は以下の通りです。
《 最優秀賞(香川県知事賞) 》
『蓮の花咲いた』亀谷美奈代
《 入賞 》※順不同
『ジョバンニの船』ぷくのすけ
『いつもそこにあった風景』アオリイカ
『シロクマダイブ』青乃家
『コイに・・・』空遊人
『キーホルダー』大西典子
『わたしのおさんぽ』佐藤咲曲
『3姉妹とおじさん』松井ナオコ
『影映の呼吸』中村有
『いつまでも』森合れい
以上
〈 亀谷美奈代氏の『蓮の花咲いた』について 〉
10作品が最終選考に残った。山下淳二氏、佃昌道氏、山本知子氏、半空文学賞実行委員会からは、中川隼、住山直紀、岡田陽介が出席して、最優秀賞にはどの作品がふさわしいのか、それぞれに意見を出し合った。独創的なアプローチの作品、日常の中の少しだけ特別な出来事を鮮やかに切り取った作品、栗林公園を深く見つめて自己との対話を重ねていく作品、どの作品も栗林公園を舞台として、生き生きとした人間が描かれている。なかでも亀谷氏の『蓮の花咲いた』は、特に記憶に残る作品だ。「A4用紙片面1枚以内」という限られた文字数制限の中で、「現在」と「過去」を横断しながら、主人公の体温や感情をこちらに伝えてくる文章の運びが見事だ。どんな人でも感情移入してしまうのではないだろうか。この作品を読んだ人はきっと、栗林公園に足を運び、小説の内容を回想しながら、件の池に向かうことだろう。そのとき「文学」と「現実」が結びつき、その体験は記憶の中で豊かな香りを漂わせるに違いない。
——半空文学賞 主宰 岡田陽介