「ゲイ」と「BL」はどういう関係なのか。
ゲイがBLを書くということ、ゲイとしてBLを書くということ。
BLが好きな、一人のゲイとしての自分。
それに向き合った、僕のはじめてのエッセイです。――ゲイが書くBL。
そう聞いて、あなたはどう思いますか?
これは僕が、自分の主催するサークルで、イベントに参加するとき実際に使用していたキャッチコピーです。この言葉をポスターに印刷して、同人誌即売会に参加していました。
イベントに参加すると、スペースからお客さんの反応がしっかり見えます。ポスターに大きく書かれた『ゲイ』『BL』という言葉。場内を探索するお客さんがそちらに一瞬視線を向けるのが、意外なほどしっかりと観察できます。
当然、興味を持たずに通り過ぎる人がいます。
その言葉に興味を持って買ってくれる人もいます。
苦虫を噛んだような顔でそれを見て(それから僕を確認して)、離れる人もいます。
「お兄さん、ゲイなんですか?」と正面から聞いてくる人もいます(そして、そういう人は大抵の場合買っていきます)。
『ゲイ』という単語には、いまだに大きなインパクトがあるようです。世の中の意識はこの数年でかなり変化したと感じてはいますが、おそらくまだ多くの人にとってそれは自分の近くにいる存在とは思えておらず、また、同時に興味をそそる存在であるということなのでしょう。
そして、ゲイとBLという言葉の並び。
「ゲイのひとがどういうBLを書くのか気になって」、「このキャッチコピーを見て、気になりました」。そう言われたこともあります。
だから、この言葉は少なくともキャッチコピーとして機能していたと思います。
――ゲイが書くBL。
この言葉に興味を持ってくれるひとがいる。
それは、『ゲイ』という言葉のインパクトと同時に、その言葉の並び――『ゲイ』と『BL』という言葉が、不思議な関係で結びついているからだと思います。
BL――ボーイズ・ラブは、男性同士の恋愛模様を描く、マンガ・小説の(そして最近は、ドラマや映画の)いちジャンルです。
男性同士の恋愛。
しかし、それは現実の『ゲイ』と必ずしも重なるものではありません。それどころか、人によっては、それを『水と油』だとさえ思う人もいるでしょう。
BLのことをよく知らない人は、そこになぜそんな違いがあるのかわからないかもしれません。
もしあなたがBLに関して知識があったり、BLが好きな方であるならば、ゲイとBLの関係について、少しは思いを巡らせたこともあるかもしれません(できればそうであって欲しいと僕は思っています)。
いずれにせよ、それはとても近くて、とても遠い。
この本では、僕がなぜその近くて遠いものの間に立っているか、そしてどんな景色を見たのか、そしてこれからどんなものを見たいと思っているか、という話をしたいと思っています。