かつて彗星の一部だった小さな塵は、彗星に置き去りにされた哀しみに膿んでいた。流星になって燃え尽きることも、故郷の記憶を慰めにすることもできず、思考が虚無に呑まれて消えるのを待つだけの永劫の日々。
そんな塵の前に故郷の星から旅立ったばかりの人工衛星が現れる。衛星は塵が生まれた「原初の宙」に向かう使命を託されていたが、生まれた星には帰れないままそこで朽ち果てる定めにあった。せめて自分が終わる場所を知っておきたい、故郷について教えてほしいと祈る衛星に、記憶も光も持たない塵は果たして何ができるのか。
いびつでも辻褄が合わなくてもいい。どうせこの場にいる誰もほんとうなんて知らない。今この一時、この先ひとりぼっちになる旅人を照らせればそれでいい。
*2025年9月20日開催「ZINEフェス仙台」新刊の表紙と仕様を変更して再販する第2版です。
*本作は表紙の装画にもお借りしています、みさきんさん製作のアクリル画「流れ星の終点」から着想を得たものです。