当たり前じゃないような、当たり前の日常の物語。
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一日に朝は、一回しか来ない。夜は一日に二回あるのに。
その貴重な朝を、週に何度もヒロと過ごすようになって二年経つ。まだ眠っている彼をベッドサイドから 見下ろした。今朝も布団から右脚だけはみだしている。年中、「寝る時は短パン」主義の彼。薄く筋肉のついた太ももを大きく露出している。
うーん、悩ましい。
悩ましいのは彼の寝姿のことではない。正直なところ、私はヒロの身体に色気などこれっぽっちも感じていないのだ。ヒロも私も、今年で二十七歳。若くとも大人である。社会人である。付き合って三年である。だから、悩ましい。
付き合って、週末と平日の何日かをいっしょに過ごす。駅からわりと近い私の部屋には、ヒロの私物が入り混じって置かれている。冷蔵庫の中にも、食器を置いているカラーボックスにも。フードプロセッサーや電動のコーヒーミルなどの調理家電は、二人で買った。前者は一度使ったきりだが、コーヒーミルのほうは活躍している。
そんな半同棲状態になってから二年も経ってしまった。大きな喧嘩もなく、日々穏やかである。こんな暮らしが続いてくれるといいな、とも思う。
ヒロと過ごすことに不満はない。むしろ過ごすことを望んでいる。望みすぎている。渇望している。あーもう、結婚したい。すぐしたい。
むにゃむにゃとヒロが何か言っている。言え。けっこん、て言え。セイ。
私は念を送る。彼まで二十センチの距離から念を送る。寝言でもいい。言えるようになれば、彼もすんなりプロポーズするかもしれない。
雑誌やネットの情報によると、結婚というのはとにかく勢いが大事だという。その意味で同棲は危険だ。「別に結婚しなくても今と同じでしょ」と、逃げの口実を与えてしまう。
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