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愛に名前をつけるなら

  • イ-18 (小説|恋愛)
  • あいになまえをつけるなら
  • 蜜木きいち
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 140ページ
  • 600円

  • 女子高生が親友に恋をする表題作「愛に名前をつけるなら」

    初恋の人に再会し青春を取り戻そうとする「星たちの祝福」

    コロナ禍で不純異性交遊にいそしむOL「マスクにキスを、髪に美毒を」

    16歳、20歳、27歳、それぞれの愛にもがく女たちを描いた作品。


    【愛に名前をつけるなら 冒頭抜粋】
     前を走る白いうなじが見えた。
     こんな些細なことで心臓が痺れ、僕を呼ぶ声すら幻のように響く。 「愛美ほらあ、ぼーっとしてないで走って。ほんとに遅れちゃうよ」 「あ……うん、走ってるって」
     思い出したように足を速める。なんで体育の前って数学なのー、とぼやく疾風は数学係で、彼女には大きすぎるホワイトボードを今さっき準備室に置いてきたばかりだ。
     追いつくと、なびくツインテールからほのかにシャンプーのにおいが香った。花のようなその芳香に、思わず目を逸らす。
     開けまーすっ、と疾風が勢いよく更衣室のドアを引くと、弾けるような話し声と、汗と制汗剤の混じった空気がぽわんと僕たちを包んだ。
    (中略)
     遅れて更衣室を出ると、真面目な顔で鏡に向き合う疾風を見つけた。さらさらと流れるような髪をひとつにまとめ直す手つきに、こっそり目配せする。まるで小動物のように濡れた瞳と、少し垂れた目元が愛おしい。
     それに比べて――体育館の大きな鏡に、背の高い女子生徒が映る。  長い前髪の下から僕を見つめる、暗く大きな瞳。透き通るような肌と、母によく似た、すっと通った鼻筋。体育着の上からでもわかる、いかにも女らしい体型を苦々しく睨み、すぐに俯いて歩きだした。
     残暑は嫌いだ。半袖では心許なくて、長袖では暑すぎる。




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