こちらのアイテムは2017/6/11(日)開催・第二回文学フリマ岩手にて入手できます。
くわしくは第二回文学フリマ岩手公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

いと - へん 【糸 - 偏】

  • イ-15 (小説|郷土)→配置図(eventmesh)
  • いと へん
  • 砂原藍
  • 書籍|A5
  • 28ページ
  • 300円
  • 2017/06/11(日)発行
  • 『糸偏』のつく漢字からなる、掌編集。

    『収録作品』
    【糸】
    【紡】
    【縫】
    【縁】
    【組】
    【結】の六編。
    どれも数分程度で読めます。

    『試し読み/本文より抜粋』
     【糸】
     何もかも、以前のように戻れる。 そう思っていた。
    現実は違った。
    残されたのは、投薬が必要な身体と鎖骨の少し上を真横に走る6センチの傷痕。
    抜糸が不要な分、身体に負担はかからない。
    溶ける糸で縫合されていても、手術をしたことは目に見えて明らかだ。

     この傷がわたしの生きる証になると、ひとは言う。
    死ななくてよかったじゃないかと、誰かの声を聴く。
    そんな簡単に割り切れるものではないのに。

      【縫】
     共働きの両親を持つ一人っ子の私は、祖母に預けられることが多く、よく手仕事を眺めていた。
    母は「危ないから」と私の前では縫物をしない人で、小学校中学年ぐらいには、
    祖母の真似事をするようになった。
    さすがに普段祖母が使う仕事道具には触らせてもらえなかったが、初めて指ぬきをもらった日には嬉しくて寝つけなかったほどだ。

    裁縫を習う時には、祖母が『周りに合わせなければ』と、流行のかわいい裁縫セットを学校経由で一括購入した。
    道具の手入れ方法は祖母が教えてくれた。
    「手入れして長く使えば、次第にさつきの手になじむからね」
    祖母はそれからも時折、繰り返し私に言い聞かせた。

     【縁】
     家を建てようと決めた時、夫は言った。
    「縁側が欲しいなぁ……」
    「えっ、書斎じゃないの?」
    一人になりたい時もあるだろうと、お互い二畳か三畳分の小部屋をそれぞれ作るつもりでいた。
    それに男の人は本を読まない人でも、書斎を欲しがると既婚の先輩や友人、そしてお互いの親からも聞いていた。
    「それもいいんだけど……」
    「何?」
    「……縁側で、ひなたぼっこをしながら、猫を撫でまわしたいんだ……」
    夫は若干、照れながらつぶやいた。


    ※2019年8月、岩手県花巻市の石鳥谷図書館に寄贈されました! 全国に貸し出しも可能です!

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