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王さまのかなしいお話

  • き-27 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • おうさまのかなしいおはなし
  • 鳥彦
  • 書籍|B6
  • 2,000円
  • 2025/12/26(金)発行
  • 2025年の個展「王さまのかなしいお話」にて発行。
    いろいろな王さまのお話、全66篇。

    以下サンプル

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    22.絵を描いた王さま
    とある国の王さまは、なんでも自分でできてしまう人でした。 だから王さまは、自分で料理もするし、自分で着る物を縫ったりもしました。 そんな王さまなので、お城にかける肖像画も絵かきに任せるのではなくて、自分で描くことにしました。
    王さまの時代には鏡がまだなかったので、自分で自分の顔を見るには、泉や川に行って水面に写った自分の顔を見るしか方法がありませんでした。 王さまはお城の近くの湖に出かけていって、湖を覗きこんでは肖像画をちょっちょっと描いて、また覗きこんではちょっちょっと描いていきました。
    湖の水面はいつも綺麗だとは限らなかったので、王さまの肖像画は雨の日はお休みになり、風の強い日はゆっくりゆっくり描かれ、冬になると水が凍って、春になったら続きを描きました。 王さまは根気強く、何年も何十年もかけて自分の肖像画を描き上げました。 だから王さまの肖像画は、あるところは歪んでいて、あるところは凛々しくて、あるところは年老いて、まったくヘンテコな肖像画になってしまったのです。
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    37.大きな足の王さま
    この街のいりぐちには、石でできた大きな足の像があります。 じつは、この街だけではなくて、この国にあるどこの街でも、同じ足の像が置いてあります。 それは、むかしこの国にいた王さまがかかわっているのです。
    むかし、とても大きな足の王さまがいました。 王さまは、背が高いわけではなく、ふとっていたわけでもなく、足だけがとてもとても大きかったのでした。 はじめて王さまと会った人は、だれでもみんな王さまの足の大きさに「おおっ」とおどろいて、なんだか気後れしました。 そのおかげで、王さまがよその国から来た使者や、よその国の王さまと会うときは、いつでも王さまが会話の主導権をにぎっていました。 みなさんも、こんなに足の大きな人とお話しすることがあれば、なんだか落ち着かない気分になって、 言われたことになんでも「はい、はい」と、きっと言ってしまうことでしょう。
    そんなふうだから、大きな足の王さまの国は、この一帯でいちばん大きな国になりました。 大きな足の王さまが、ムチャな命令やお願いをしても、みんないうことを聞いてしまうのですから、当然のことでした。 でも、遠く離れた国のことになると、王さまの大きな足の力も通じませんでした。 王さまの大きな大きな足は、じっさいに見たことがない人にとっては、おどろくことも気後れすることもなかったからです。
    大きな足の王さまは、「どうにかして遠くの国にも自分の偉大さをわからせる方法はないものか」と考えました。 それで王さまは石工に命令して、自分そっくりの像を造らせました。 そして、遠くの国に手紙をおくるときは、手紙といっしょにその像を運ばせて、大きな足の王さまがその場でお話しをしているかのように使者に手紙を読ませました。
    遠くの国の王さまは、大きな足の王さまの像の大きな足を見て「おおっ」とおどろいて、なんだか気後れしてしまい、大きな足の王さまの手紙に書いてあることになんでも「はい、はい」と言ってしまいました。 こうして、この国はもっと大きくなりました。 そして、大きな足の王さまは、もっともっと遠くまで自分の国にしようと考るようになったのです。
    大きな足の王さまの像は、いろいろな国に運ばれました。 山の上にも、海の向こうにも行きました。 そうしてなんどもなんども運ばれているうちに、足首のほそくなっているあたりで、像はボキリと折れてしまいました。 王さまの像を運んでいた家来は、大きな足の王さまに正直に「王さまの像をこわしてしまいました。」と報告したそうです。 でも、大きな足の王さまは怒ったりしませんでした。 それどころか「なんとまあ、前よりワシそっくりになったわい!」と言って、足だけの像をとっても気に入りました。
    そうして、大きな足の王さまは、自分の国のぜんぶの街に、大きな足の像を置かせるようにしました。 そこが誰の国の街なのか、ひとめでわかるようにです。
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