当サークルで「断片的資料集」として刊行した短篇集『挿文綴 第一集(頒布終了)』、『第二集』から3篇+書き下ろし2篇の計5篇からなる創作民話集。
「異界の民話」をテーマに、遥か昔、遠い国のどこかであった、誰も知らない云い伝えを綴りました。
『挿文綴』シリーズ同様、長編連作『星めぐり常世草子』と世界観を共有しておりますが、単独でもじゅうぶんお楽しみいただける内容となっております。
以下収録編のご紹介です。
・身代はり人形
※『挿文綴 第二集』より
この地にありし双子は何処かを欠きて生まるるが定(サダメ)にございます。この地に生まれし双子はひとつを冥土の地に捧げ、残りしもうひとつのみを育て、はじめて全子(マタフゴ)となり得ると信ぜられております。
・冥往丸
※『挿文綴 第一集』より
用法・効能:双子の生まれし折、生まれ落ちてのち月の一巡りするまでに、供物とする者へ与へよ。与ふる折は丸薬喉奥へと押し込み、飲み込ます。飲まぬ折は丸薬舌下へ安置し、口中にて溶かす。数刻ののち苦しみ無く昏睡し、地へと還る也。
・世に聞く茫茫の事
※『挿文綴 第一集』より
現世に聞ける「あやかし」なるもの大凡はこの地にありて馴染み深きを示せども、この地でも恐らるるあやかしがひとつだけございます。その名を「茫茫」と申します。その相貌定かにあらぬも、鬼共口を揃へ申すは、その姿の黒うこと、「ぼう、ぼう」と妙なる音を立て来たること、そして近づきしものは皆飲み込まるることにございます。
・オタカさま
※書き下ろし
かつてこの島に「オタカさま」と呼ばれる都落ちの貴族が流された。ある時、ひとりの島民がオタカさまに自分の娘と契りを結んで欲しいと願い出た。するとオタカさまは自分の望みすべてに応えた娘を嫁に迎えよう、と云った。
・御しるし嫁子
※書き下ろし
御しるし嫁子は、わたしたち島娘の憧れだ。垢を洗い流し、化粧をして、色とりどりの花や紐で飾られたその晴れ姿に見惚れない娘はいない。妹が嫁子に選ばれてから三年後、ふたたび嫁子選びの時がきた。今度こそ、わたしが嫁子さまに選ばれるんだ。