・顔のない娘
また失敗だ。私は四一五体目に作り上げたその人形の首を刎ねて土に還した。どうしても顔が作れなかった。どれほど上等の土を使っても、いくら心血を注いでも、工房には泥の山が積み上がっていくばかりだ。
・ちゑのみ
私の工房に珍しく来訪者があった。それは冥土の者ではなかった。皮だけで作られたぼろきれのような人間だった。ぼろきれは私に頼みがあるようだった。彼の郷里には不老不死とも云える一族が棲み、彼らの体内には「治癒の血」が流れているのだと云う。だが今や治癒の血をもつ末裔は一人のみとなってしまった。ぼろきれはこの血を絶やさぬ為、私の人形を器に使いたいと云うのだ。
・天の炎を盗んだ女
今は昔、炎は天にのみあり。炎の守り手は天の二王に仕へしひとりの天女なり。火守の天女日毎に蓮の香含みた吐息を吹きかけ炎絶やすことなし。この頃天には炎の他にこれほど烈しく光の放ち、熱を抱くものあらずして、天人天女らこれを畏れ近づくことなし。ただ火守のみがこの炎に寄り、時に触れ、畏るることなし。火守この炎に深く心傾ぎ、炎もまた火守に心を寄せり。