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柊探偵の夜想曲

  • ひいらぎたんていののくたーん
  • さくらひな
  • 発行予定だった小説の冒頭部分です。


    俺の名前は柊恵雨、探偵だ。

     探偵というと難事件を解いたり、美女を悪者から守ったり…ドラマや小説ではそんなカッコいい探偵が描かれているだろうが、現実の探偵はそんなカッコいいものじゃない。現に今日来る依頼人も…

    「すみません、昨日電話した佐藤ですけど…」

    「はい、佐藤さんですね。どのような依頼でしょうか?」

    「実は…婚約者が浮気しているみたいで、素行調査をお願いできますか?」

    「分かりました。では詳しい話を聞かせて頂けますか?」

     ほらな、今回も浮気調査。依頼の九割はこんなもんだ。がっかりしたかい?現実世界の探偵なんてこんなものだよ。

     ほとんどの探偵はね…。

     俺も表向きは皆と同じ探偵の振りをするために、探偵事務所を構えて、昼間はこうやってごく普通の探偵として依頼を受けている。生きていくためには、信用が必要だからな。

     あぁ、今日もそろそろ日が暮れる。これからが俺の探偵の時間だ。


    「恵兄、小梢ちゃん。飯出来たぜ」

    「あぁ、サンキュー」

    このくそ生意気なガキは冬馬。自称引きこもりの天才ハッカーだ。ある事件で両親を失った彼をなりゆきで俺が引き取ることになった。いつか一人で生きていけるようにと色々教えた中で、少年が非凡な才能を発揮したのがハッキングの技術だった。わずか一ヶ月で俺の技術を全て吸収し、あっという間に追い抜いてしまった。今では俺なんか足元にも及ばないくらい、ハッキングの世界では超有名人になってしまった。

     事件の影響で今だに一人では外出出来ないし、俺や小梢と一緒でも人が多いところへ行くのは嫌がる。いつまでも引きこもりなのは彼にとってよくないかもしれないが、それだけ彼が負った傷は深いのだろう。

     いつかは彼も心の闇に立ち向かう日が来るかもしれないが、彼はまだ十五歳だ。今はまだ、未成年という立場に甘えても構わないだろう。

    「相変わらず美味しいわね、引きこもりのくせに。」

    「小梢君、君は引きこもりのことを何も分かってないね。引きこもりは外で食事をすることが出来ない。だからこそお店顔負けの腕前に成長したのだよ。食べることは生きることだからな」

    「言ってることはすごくカッコいいけど、引きこもりのアンタが言うと説得力ゼロね」

     少々口が悪いこの少女は柊小梢。俺の従妹だ。訳あって、今は俺の探偵事務所で一緒に働いてくれている。

    「恵、何かこっちに近づいて来る…」

    「あぁ、俺も感じる」

     夜になるとやってくる俺の依頼人、それはこの世に未練を残した者の魂たち。特に、生きている人間に復讐をしたいと願う魂がなぜか俺の元へやってくる。

     俺がこの不思議な力に目覚めたのは、十年前の事故がきっかけだった。その事故で俺は両親と双子の妹を失った。俺は命こそ助かったが、一時は生死をさまようほどの大怪我を負った。

     そして気づいた。皆には視ないものが視えるようになったことに。その日以来、俺の元にはこの世に未練を残した魂たちが次々と現れるようになった。その多くは突然の自分の死に戸惑い、嘆き悲しむ者が多いが、中には強い恨みの念を抱き、時には俺の命に危険が及ぶほどの魂もいた。

     幸い俺には小梢がいてくれたおかげで、無事生き延びることが出来た。小梢は生まれつき霊感があり、除霊ができるほどの力の持ち主だ。俺に危害が及びそうな例は小梢が追い払ってくれた。

     死の淵からよみがえったからだろうか。俺の元に死者がやってくるのは。それとも、俺が抱く感情に引き寄せられているのだろうか…

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