アメヤ
- 南3-4ホール | く-87 (小説|SF)
- あめや
- 波枕
- 書籍|文庫判(A6)
- 32ページ
- 100円
- 2026/11/8(日)発行
自分は死のうとしたのだった。何もかもがはちきれて、誰にも告げず、一人海へ来たのだ。
そうして、持っていたものを浜辺に全て投げ捨てて、飛び込んだのだ。夏といえど、夜の海は冷たかった。暗闇の中、波を目で追いかけることもできず、あっという間に飲み込まれた。後悔が怒涛に押し寄せてきた。誰をもを敵だと思っていたのに、やけに彼らのいい顔ばかりが浮かぶ。
屈辱ばかりの毎日が、尊いものだったように思えてくる。手放した何もかも、惜しく見えて、思わずもがいた。本当は自分だって生きていたかった。それを許せないのは、自分自身だった。(本文より)
