『栞』は、2023年11月の文学フリマ東京37に向けて、初めて制作した小説です。今回の出店にあたり、当初の内容から40ページほど増やし、収録内容や表紙のデザインも見直しました。この本を書いたときに考えていたのは、記憶についてです。生きていると、誰かと過ごした時間や、何気なく交わした言葉が、思いがけず自分を支えてくれることがあると思います。
それは嬉しい記憶だけでなく、悲しかったことや、もう戻れない時間も同じなのかもしれません。時間が経つにつれて、いろいろな出来事を忘れてしまいます。それでも、ふとした瞬間に思い出す景色や、そのときの感情がある。
そうした記憶を、本に挟む栞のように、物語として残しておきたいと思いました。十の物語を通じて、読んでくださった方自身の記憶にも、そっと触れられる一冊になれば嬉しいです。