記録と記憶/村の風習/片思い/AI/バタフライエフェクト/音楽/罪と後悔/救い
「書き残された事実だけでは、人の心までは記録できない。」
昭和初期の事件資料に浮かび上がる村の風習。原稿を書けない先生と編集者が語る、甘く遠い片思い。AIが天候を制御する未来で、予測を揺るがす一匹の蝶。そして、罪を刻んだ文字を竪琴の音でほどく神話的な物語。
異なる時代と題材を通して、記録の外にこぼれる思いや、人が心に抱えるものを描いた四つの短編作品集です。
■収録作品
『胎児の欠片』
昭和八年、病院から中絶胎児が消えた。捜査資料や新聞記事を通して明らかになるのは、ある村に伝わる埋葬の風習と、事件の背後にある人々の願い。記録する側の言葉が、何を伝え、何を覆い隠すのかを問いかけます。
『恋を掬う』
締切間近の先生と、原稿の塵を燃やして芋を焼く編集者。二人は「恋を掬う」とはどういうことかを語りながら、片思いの甘さや、憧れの人を見つめる喜びに触れていきます。
『ラプラスの蝶』
AIが天候を予測し、安定した晴天を人々に届ける未来。マングローブで観測塔を建てるキューバ人ラモンの仕事は、ある小さな選択によって思いもよらない結果へとつながります。
『イリアスの竪琴』
息子を手にかけた記録に苦しむ貴人と、館に囚われた奏者。追手が迫るなか、奏者が最後に選ぶのは、財産ではなく、男の魂を解き放つ一曲でした。
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