年齢差ガールミーツガール、人が死ぬ百合小説です。
六十二歳のフルート奏者・千里は、人生にさほど未練がない。離婚し、息子とも離れ、かつて愛した音楽さえ、今ではただ生活を続けるためのよすがになっていた。そんな真夏のある日、ホテルの演奏仕事を終えた千里の前に、葡萄色の髪をした騒々しい少女・モモが現れる。「手荒れしてると思ったから」と、ハンドクリームを抱えて。
ヒステリックで、お節介で、感情のままに走り出すモモ。てっきり音楽とは無縁の若者だと思っていた彼女は、実はヴァイオリンを愛し、音楽家を夢見る音大生だった。
喫茶店が閉まっても語り続け、食事をして、互いの音を聴き、やがて二人は恋に落ちる。
人生を終える準備をしていた女と、人生がこれから始まる女。
あまりにも違う時間を生きる二人は、それでも「これから」を一緒に過ごそうとする。しかし千里には、モモにさえ告げていない秘密があった。
これは、音楽と、生活と、恋と、別れの物語。
そして――
愛した人が、どこにもいないのに、世界のどこにでもいるようになるまでの物語。