惨禍の上の箱庭
- 南1-2ホール | O-65 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- さんかのうえのはこにわ
- 時雨縹
- 書籍|文庫判(A6)
- 72ページ
- 0円
- 2026/11/8(日)発行
※無料配布です※
【O-65】にて配布いたします。
こちらは、【M-27~28】夜の底(斑鳩睡蓮様のスペース)にて配布している、残酷×美しい物語アンソロジー「夜の底から見上げる星は」の参加のため書き上げ、大幅な字数オーバーのためにアンソロ落ちしたものです。
アンソロには悪人の男×善人の少年の物語を載せて頂いていますので、気になる方はそちらもよろしくお願いします。
悪魔の瞳を持つ王女×王女の近衛騎士
真実を語りましょう。
この箱庭に囚われていた者のために。
真白い月の光の下で、主である少女を亡くした女中と、少女を殺した国の若い兵が向かい合っていた。
兵は問う。何故この国の王は狂ってしまったのか、と。
女中はその問いに答えを返さなかった。代わりのように、兵に問い返す。何故それを知りたいのか、と。
兵は答える。「悪魔の目を持つ王女」。彼女がその瞳を持って父である王を狂わせたと聞いていた。だが、果たしてそれは事実なのだろうか。処刑前に言葉を交わした王女からは、高潔さと清らかさを感じたが、悪魔などと呼ばれるような悪辣さは感じなかった。だからこそ知りたくなったのだ。王女は本当に、王を狂わせ隣国に戦を仕掛けたのかを。
兵士の言葉に、女中は月を見上げる。その瞳に、何が写ったのはわからない。しばらく口を閉ざしていた女中が、やがて静かに口を開いた。そして、言ったのだ。
――「真実を、語りましょう。この薔薇園の主であった、悪魔の眼を持つ王女のことを。この箱庭に閉じ込められていたのは、誰であったのかを」
そして王女と近衛騎士の物語が語られる。
誰にも言えない秘密があった。
誰にも言えない絶望があった。
そして、誰にも言えない愛があった。
お互いにすら、彼らは愛を囁かなかった。けれども確かに、その眼差しが、語尾の震えが、彼らの互いへの愛を告げていた。
ただひたすらに、相手を深く想う愛であった。
さあ、今ここに彼らの真実を語ろう。
これは泣き喚きたくなるほど痛く、自分勝手なほど献身的で、それでいて静かで優しい激情を秘めた、愛の物語。
