教室に漂う微弱な悪意を、高校生の芽衣は心の中で『毒』と呼んでいる。
いつも芽衣の本当に思っていることを知りたがる、『正義感が強い』夏樹。友達の名前の横にMBTIを書き込む、『明るく人懐っこい』明香里。中学からの友達である二人と笑い合いながらも、芽衣はどこか馴染めなさを感じていた。明香里がクラスの男子たちから陰で「ブサイク過ぎて可哀想」と笑われていることも、二人には言えないままでいる。
そんな芽衣が惹かれていったのが、クラスメイトの佐藤ゆらぎだった。えくぼが印象的で、周囲からは『変わってる』と言われている女の子。毎日違う場所で昼ご飯を食べたり、グラウンドに寝転がって雲を眺めたり。周囲の言葉にとらわれず、自分の世界を楽しんでいるように見えるゆらぎなら、教室の『毒』を晴らせるかもしれない。
そう思った芽衣は、ゆらぎの動画を撮ってバズらせることで、彼女をクラスの中心にしようと決める。
ゆらぎの許可を取り、クラスの『毒』を晴らす『抗体計画』を進める芽衣。やがて夏樹と明香里も動画のことを知り、四人で過ごす夏が始まる。
そして夏休みの終わり。
芽衣が投稿した一本の動画が、思いがけず拡散される。
けれど、芽衣が書いた『言語化出来ない友達』という言葉は、彼女の意図とは違う意味で受け取られ、やがて新しい『ラベル』となって芽衣の望まない方へと進んでいく。
言葉があるから、誰かを知ることができる。
言葉があるから、わかり合えないことを知る。
言葉と友情のあいだでゆらぎながら、芽衣は自分の望みと向き合っていく。