だれかと一緒に飲食店へ行ったとき、茶色いコップに入った飲み物が運ばれてきて、これはいったい水なのか、お茶なのか、一口飲んでみたりしながら、だらだらと議論する時間が好きです。それが本当はどっちなのかはべつにどうでもよくて、あの、「意味がない」ということに大きな意味がある、かけがえのない時間をいつまでも過ごしていたいと思っています。
「みずしるべ」とは、環境省が唱えている「水辺のすこやかさ」の指標を意味することばだそうです。起きて顔を洗うときの水、お湯を沸かすときの水、植物に水をやるときの水。雨も、海も、そしてなみだも、ひろく言えばすべて水です。水はさまざまなかたちでわたしたちの日々に寄り添い、それぞれが抱く“すこやかさ”を叶えてくれるものでもあるような気がしています。
この本は、風景をデッサンして絵のなかに閉じ込めるように、いま、わたしたちがこころで見ているものを、デッサンするように、ていねいにことばに書き起こす共著シリーズの第4弾です。
今回のテーマは、「水」。
新たな試みとして、七成と美帆の文章に加え、四人の書き手の方々にも文章を寄せていただきました。ことばの海のなかからすくい上げた、6つの「水」のかたちを、あなたがいま座っている水辺から、ながめていただけたらうれしいです。
ーー「はじめに」より