陰陽師とか物の怪とか、和奇譚小説「猫屋奇譚」を書いています。
物の怪の通りで喫茶店を営む陰陽師と、店の従業員である鬼の晴が、
人間や物の怪らからの相談や依頼に乗り出して行く! そんな物語です。
「猫屋奇譚 桜、連れて行く者」
和風奇譚、読み切り短編4話収録。
桜、連れて行く者・睡蓮、連れて行く者・鳥笛を吹く者・ 銀杏
1冊を通じて春の桜、夏の睡蓮、木枯らしの吹く鳥笛に最後は冬の銀杏にまつわる奇譚になります。
「あれは、鳥笛か」
呟くと同時に何かが、前方から何かが近付いて来た。とっさに屋根から電柱へと飛び移る。
電灯を避けるように身を隠し、空に浮かぶ三日月が背の高い建物の隙間から照らす薄暗闇に目を凝らす。
それは、飛ぶように迫って来た。頭巾で顔を隠した男で、夜目にも浮かび上がるような白い着物をはためかし、僅かに覗くその口元には鳥笛が噛むように咥えられている。
北風よりも冷たい空気を纏わせたそれはあっという間に過ぎ去り消えて行った。