アナゴと美少女
- 南1-2ホール | O-53 (小説|純文学)
- あなごとびしょうじょ
- 大和ヌレガミ
- 書籍|文庫判(A6)
- 122ページ
- 700円
- 2026/9/1(火)発行
知らない誰かと出会ったり、ときには道に迷ったり、ちょっと変な夜を過ごしたり
東京でフリーター生活をしているミヤモトは、異性との出会いを求めていた。個人情報誌や出会い系サイトで知り合った女性たちはミヤモトが求めていたキラキラ感とは少し違い、どこか奇妙な悩みや事情を持ちあわせていた。二つの人生が一瞬ぶつかり、やがてほどけてゆく。
他人と呼ぶには近すぎて、恋と呼ぶには少し遠い。
そんな三つの物語。アナゴと美少女
上京したばかりのフリーター・ユウジは、個人情報誌で知り合った十八歳のミヤコに惹かれていく。人には言いにくい仕事をしている彼女の悩みを聞くうち、恋とも友情ともつかない奇妙な関係が始まっていく。うれし恥ずかしルームシェアリング
出会い系サイトで知り合った、家出中の無職女ノリコを泊めることになった二十七才の男。期待していた「共同生活」はドラマとはほど遠かった。親切心、下心、苛立ち、好奇心。男女の共同生活の、格好悪くも可笑しい現実。道はまがって
「ここではないどこか」へ行きたかった無職の男が、出会い系サイトで知り合った女を訪ね、茂原へ。欲望と幻想と現実が入り混じる奇妙な一夜の果て、男はひとり、曲がりくねった道を帰っていく。以下、アナゴと美少女の試し読みです。↓↓↓
オレとミヤコは渋谷の街をブラブラしていた。どこに行くかを決めもせずに。「なぁ、渋谷って歩いてて楽しい?」少しイライラしながらオレは聞く。
「うん、普通に楽しいけど? いろんな人間見てるの楽しいし、好奇心旺盛なのかなぁ、私って」
「雨やってのに無駄に人が多いだけやん。それに、みんな似たようなカッコしてるし、個性ってなんなの? って逆にヘコむわ」
ミヤコはオレを見て笑う。
「きっとさ、君みたいな人が街中でマシンガンをぶっ放すんだろうね! いいね、それ、決定ね!」
ミヤコはオレの肩に肩をぶつける。オレはわざとらしくよろけてみた。
冷たい雨の矢が肌に突き刺さる。歌いたい気分じゃないとミヤコは言うけれど、強引にカラオケに入ることにした。この日のオレは少し暗かった。どしゃ降りという絶望ではなく小雨のような憂鬱。こんな日こそ、青空であってほしかった。心がブルーなときこそ、空はブルーになるべきなのだ。
部屋が空くのを待っている間、オレは手帳を広げ、関西に残した好きな人のプリクラをミヤコに見せた。それも少しノロけながら。そうすることでミヤコにたいし芽生えかけた恋愛感情を抑え込むのだ。
「これはな、告白した直後に撮ったやつで。んで、これがな……」
「なんか綺麗ってより、可愛いって感じの人だね。純粋そうに見えるよ」
「だしょ? だしょ?」
「んでも結局、この人ってエッチさせてくんなかったんでしょ?」
痛恨の一撃を放ってきやがる。
「きっとレイプだよ。この人レイプされてんだよ昔に!」
そう言ってミヤコは笑った。それがまた、腹が立つほどに愛らしい笑顔だった。
https://note.com/nuregami/n/n46cfa6010262
