41歳、18年勤めた銀行を辞めた。
次の会社へ行くまでに、社会人になって初めて、まとまった休みができた。
さて、何をしよう。
僕が出した答えは、
「メッシに会いに行く」
だった。
2023年秋。僕は一人でアメリカへ向かった。
最初の目的地はフロリダ。
前年のワールドカップでアルゼンチンを優勝に導き、アメリカへ移籍したばかりのリオネル・メッシに会うためだった。
もちろん、約束があるわけではない。
どこにいるのか。
いつ現れるのか。
そもそも、本当に会えるのか。
わからない。
それでも調べ、考え、現地へ行き、待つ。
そうして始まった旅は、メッシだけでは終わらなかった。
メンフィスでは、デリック・ローズとペニー・ハーダウェイ。
フェニックスでは、渡邊雄太や日本代表選手たち。
ロサンゼルスでは、ステフィン・カリーやゲイリー・ペイトンII。
予定を変え、飛行機に乗り、車で移動し、人を待つ。
会えた人もいれば、会えなかった人もいる。
何時間待っても何も起きない日がある一方で、ほんの少し予定を変えただけで、突然忘れられない出来事が起きることもあった。
旅を始める前、僕はかなり細かく予定を立てていた。
ところが旅が進むにつれて、その予定はどんどん壊れていった。
面白いことに、忘れられない出来事の多くは、その「予定が狂った先」で起きた。
この本は、有名人と何人会えたかを自慢するための本ではない。
「どうすればメッシに会えるか」という攻略本でもない。
41歳の会社員が、仕事と仕事の間にできた空白を使って、自分の「会いたい」にどこまで従えるのか試してみた旅の記録だ。