名前をつけないまま、大切にしておきたい感情がある。
恋人なのか、友達なのか、それともそのどちらでもないのか。
ひとりで生きる男が、話し相手を「作る」こと。
十二年前に突然いなくなった恋人と、海の向こうで再会すること。
人と人とのあいだに生まれる、言葉だけでは捉えきれない関係を描く三つの物語。
「半分のりんご」
久しぶりに会う女性から突然呼び出された会社員の男。
仕事を抜け出して会いに行った相手との時間を過ごすうち、自分の中にある感情と、今の暮らしとの距離が少しずつ見えてくる。
「ミートピア」
山あいの草原でひとり暮らす男は、ある夜、肉をこねて人のかたちを作り、〈隣人〉と名づける。
やがて〈隣人〉は動き出し、家を建て、食べ、暮らし、そして新たな〈隣人〉を作りはじめ……。
「海の向こうへ」
新潟の海辺で出会い、恋をした大学生の男女。
卒業を前に突然いなくなった恋人と、十二年後、災害ボランティアとして訪れた佐渡で再会して……。
食卓や匂い、身体の感覚、何気ない会話。
そうした小さなものの中に、人と人との関係は残っているのかもしれません。
恋愛とも友情とも、家族とも他人とも言い切れない。
そんな「あわい」にあるものを描いた、三つの短編を収録しています。