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あの日のパンと、君の匂い

  • 南1-2ホール | Q-100 (小説|純文学)
  • あのひのぱんと、きみのにおい
  • 七緒よう
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 66ページ
  • 1,000円
  • 2026/11/8(日)発行
  • 食卓には、言葉にできないものが残っている。

    人は、誰かを完全に理解することはできない。
    一緒に暮らしても、愛し合っても、長い時間を過ごしても、最後まで分からないことがある。

    それでも私たちは、誰かと食卓を囲み、同じものを食べ、匂いを覚え、
    知らないうちにその人の時間を自分の中へ取り込んでいく。

    離婚した二人が焼く「別れパン」。
    これから始まる暮らしのために選ぶ、四人掛けのテーブル。
    亡くなった祖母が残した、少し不思議なレシピ。

    別れた人。
    これから一緒に生きていく人。
    もういない人。

    三つの物語に描かれるのは、どれも劇的な人生ではない。

    けれど、食卓には不思議な力がある。

    忘れたつもりだった匂いを、ふいに思い出させる。
    まだ見ぬ誰かとの未来を、想起させる。
    いなくなった人の暮らしを、もう一度感じさせる。

    食べたものが身体になるように、
    一緒に過ごした時間もまた、私たちの身体のどこかに残っていく。

    だから人は、それらを抱えたまま、
    今日の食事をする。

    これは、食べることについての三つの物語であり、
    誰かと生きることについての三つの物語です。

    あなたの中にもきっと、
    まだ匂いの残っている食卓がある。

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