こちらのアイテムは2026/11/8(日)開催・文学フリマ東京43にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京43公式Webサイトをご覧ください。

芥川賞あと出しジャンケン選考会

  • 南1-2ホール | O-99 (評論・研究|文芸批評)
  • あくたがわしょうあとだしじゃんけんせんこうかい
  • 西山ヤナ, 剣持真木
  • 書籍|A5
  • 40ページ
  • 500円
  • https://note.com/nishiyamaao
  • 2026/11/8(日)発行
  • 『芥川賞あと出しジャンケン選考会』を販売!
    第175回芥川賞受賞作&候補作を"あと出し"で全力批評&独自考察!
    目から鱗の選考会を開催します!
    その他おまけも充実しているよ!

    西山ヤナ(作家志望)&剣持真木(文芸評論家)のふたりが、
    芥川賞受賞作&候補作の5作を徹底討論しました!

    第175回芥川賞受賞作&候補作
    小砂川チト「ゾンビ回収婦」
    仁科斂「丹心/まごころ」
    村司侑「ソリティアおじさんがいた頃」
    八木詠美「アンチ・グッドモーニング」
    鈴木涼美「悪い血」

    おまけコーナーでは、綾木朱美『アザミ』、赤松りかこ『グレイスは死んだのか』、安堂ホセ『DTOPIA』を紹介し、九段理江のサイン会についての簡単なレポを掲載しています。(敬称略)

    本書の目次
    04 イントロダクション
    06 ゾンビ回収婦
    12 丹心/まごころ
    18 ソリティアおじさんがいた頃
    24 アンチ・グッドモーニング
    30 悪い血
    36 選考結果

    試し読み:「イントロダクション」の部分を公開します。


    傾向と対策の果てに文芸誌に取り憑かれた 西山ヤナ

     2005年の年末、文學界新人賞に応募したのが、それから長く続いていく、作家志望人生の始まりでした。人文系の大学院修士課程に進学したものの、行き詰まりを感じて、小説家を志すことにする――ある意味、ダメ院生のあるあるなんですが、大学院修了後、なんとか被雇用者となって給料をもらう生活を送るようになってからも、私は満たされるところがなく、小説を書き続けます。最初の数年は一次落ちが続き、はじめてすばる文学賞で一次通過、そののち、群像新人文学賞評論部門で二次通過、文學界新人賞二次通過と結果を出したものの、そこから9年間一次落ち。転機は2020年に文藝賞で三次通過したことで、その時にようやく新人賞通過のための〝コツ〟みたいなものが見えてきました。

     文芸誌新人賞の予選通過のコツ、それは〝傾向と対策〟を万全にする、ということです。具体的には、文芸誌新人賞は全部読み、芥川賞候補ももちろん全部読んで、さらに芥川賞候補になりそうな新人の作品もどしどし読んでいく。

     気がつくと、私は新人賞マニアかつ、文芸誌の非常に熱心な読者となっていました。新人作家の名前を出されれば、デビュー年と受賞した新人賞の名前、その後、どんな作品を出したか、すらすら諳んじることができます。歩く新人賞データベースと呼ばれてもおかしくない状態でした。

     そうなると、また別の壁にぶち当たります。確かに新人賞に応募すると、予選はほぼ通ります。しかし、最終選考に残ることがない。傾向と対策の限界が立ちはだかりました。

     20年間、純文学の新人賞に応募し続けましたが、デビューは果たせず、私はこの夏、ミステリー小説を書きはじめます。

    『芥川賞あと出しジャンケン選考会』は、私にとって、「純文学文芸誌新人賞卒業アルバム」です。もちろん、新人賞にそもそも入学できてはいませんが。

     対談相手の剣持氏は私にとって、大切な友人であり、文学創作の貴重な相談相手でもあります。私が書いた新人賞応募作品は彼に読んでもらってきましたし、私が買って読み終わった文芸誌の多くを彼にも貸して読んでもらいました。

     勢いで文学フリマに申し込んでしまったものの、何を創ろうか悩んでいると剣持氏に伝えたところ、芥川賞について批評する冊子を作ればいいのでは?とのアドバイスをもらい、このZINEの制作が始まりました。

    『ゾンビ回収婦』『丹心/まごころ』は2026年8月15日、残りは8月23日に対談を行い、加筆と修正を行っています。

     ぜひ私たちの芥川賞と純文学への愛を受け取ってください! 愛してるぜ、文学&小説!


    現代文学の最前線はファミレスにあり 剣持真木

     毎週末、西山さんと新宿のファミレスで会合をするようになったのは、5~6年前のことだ。西山さんとは2014年頃、新宿文藝シンジケートという読書会を通じて知り合ったのだが、その頃は特別に仲が良いわけではなくて、コロナをきっかけに読書会が半ば休眠状態になったあたりから、頻繁に連絡を取り合うようになった。仕事が終わった後、6時半頃に新宿紀伊國屋書店で待ち合わせて、ファミレスが閉まる11時まで喋り続けるのが毎週末の習慣のようになったのだが、それだけ話してもなお話のネタが尽きることがなかったのは、ふたりとも文学に強い関心を持っていたこともあるのだが、西山さんが学歴オタクで、大学受験について深い知識を持っていたことも大きい。高校教師を仕事としている私にとって西山さんはとても頼りになる相談相手であり、困ったことがあれば相談に乗ってもらっていた。

     また、私はなかなか教員採用試験に合格できず、非正規常勤の教員として様々な学校を転々とする不安定な生活を送っていたのだが、西山さんに相談に乗ってもらったとたんに試験に合格し、やっとのことで正規採用の教員になることができた。西山さんは私にとって恩人なのだ。

     さて、私は一応、安定した生活を手に入れることができたとして、次は西山さんの番だ。西山さんは二十年来の作家志望で、文学賞の新人賞に応募し続けている人物で、もちろん私はおおいに応援しているけれど、あれだけばっちり「傾向と対策」ができる西山さんをして、文学賞で新人賞を獲るのは並大抵のことではないようだ。また、「傾向と対策」をすればするほど、絶望が深まっていく面もある。毎年、文芸誌の新人賞を受賞するのは、若くて高学歴のイケメン美女たちで、自分はもう若くはない。さらに言うならば、そういう若者たちが新人賞受賞作を漏れなくチェックして、「傾向と対策」をしているとは思えない。「傾向と対策」など無意味ではないのか。

     しかし、それはそれでいいのだ。新人賞のシーズンになると、西山さんに「これを読んでほしい」と文芸誌を渡されて、ファミレスで新人賞受賞作の小説を読んで、あれこれ小説談義をするのは楽しかったし、私にとっては文学について現役感覚をキープし続けるための貴重な場だった。現代の純文学は難しい。きわめてハイコンテクストで、その面白さを抽出するのは、難解な方程式を解くかのごときだ。しかし、だからこそ面白い。この小冊子は、「傾向と対策」から始まった、6年に及ぶファミレスの文学談義が生んだ副産物だ。純文学の難しさと魅力がぎっしり詰まっていると思う。楽しんでいただければ幸いである。

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